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準備3 角度と三角関数

交流の電圧や電流は、時間とともに波の形で変化します。この波を式で書くための道具が三角関数です。ここでは、三角関数を「回転する点の位置」として説明します。

sin と cos は回転する点の座標

半径 1 の円(単位円)の上を、点が反時計回りに回るとします。右方向を 0° として、回った角度を \(\theta\)(シータ)と書きます。このとき

  • 点の 横 の位置を \(\cos\theta\)(コサイン)
  • 点の 縦 の位置を \(\sin\theta\)(サイン)

と呼びます。観覧車にたとえると、\(\sin\theta\) はゴンドラの高さ(中心を 0 とする)、\(\cos\theta\) は中心から見た左右の位置です。

「自動で回す」にチェックを入れると、点の高さを角度ごとに記録した線が右に描かれていきます。この波の形を 正弦波(サイン波)と呼びます。点が 1 周するごとに、同じ形が繰り返されます。

よく使う値を表にまとめます。

\(\theta\) 0° 30° 45° 60° 90° 180° 270°
\(\sin\theta\) 0 0.5 0.707 0.866 1 0 −1
\(\cos\theta\) 1 0.866 0.707 0.5 0 −1 0

0.707 は \(\frac{1}{\sqrt{2}}\)、0.866 は \(\frac{\sqrt{3}}{2}\) です。

直角三角形との関係

単位円の点から横軸に垂線を下ろすと、直角三角形ができます。斜辺の長さが 1、底辺が \(\cos\theta\)、高さが \(\sin\theta\) です。斜辺の長さが \(r\) の直角三角形なら、全体を \(r\) 倍して

\[ \text{底辺} = r\cos\theta, \qquad \text{高さ} = r\sin\theta \]

となります。三平方の定理から \(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) も成り立ちます。

高さを底辺で割った値を \(\tan\theta\)(タンジェント)と呼びます。

\[ \tan\theta = \frac{\sin\theta}{\cos\theta} = \frac{\text{高さ}}{\text{底辺}} \]

逆に、底辺と高さから角度を求める操作を \(\tan^{-1}\)(アークタンジェント)と書きます。底辺 3、高さ 4 の三角形の角度は \(\tan^{-1}\frac{4}{3} \approx 53.1°\) です。関数電卓では tan⁻¹ または atan のキーで計算できます。

ラジアン:角度のもう 1 つの単位

角度の単位には、度(°)のほかに ラジアン(rad)があります。ラジアンは「半径 1 の円の上を、点が進んだ道のり」で角度を表す単位です。1 周の道のりは円周の長さ \(2\pi \approx 6.28\) なので

\[ 360° = 2\pi \ \text{rad}, \qquad 180° = \pi \ \text{rad}, \qquad 90° = \frac{\pi}{2} \ \text{rad} \]

となります。度からラジアンへは \(\dfrac{\pi}{180}\) をかけ、ラジアンから度へは \(\dfrac{180}{\pi}\) をかけます。

交流の式ではラジアンを使います。その理由は、回転の速さを「1 秒間に何ラジアン進むか」で表すと、式が簡単になるからです。この速さを 角周波数 と呼び、\(\omega\)(オメガ)と書きます。1 秒間に \(f\) 回転するなら、1 回転が \(2\pi\) rad なので

\[ \omega = 2\pi f \quad [\text{rad/s}] \]

です。時刻 \(t\) までに進む角度は \(\omega t\) になります。

波をずらす:位相

\(\sin(\theta + 30°)\) は、\(\sin\theta\) より 30° 分だけ先に進んだ点の高さです。グラフでは、波の形はそのままで全体が左へ 30° ずれます。この「どれだけ先に進んでいるか」を表す角度を 位相 と呼びます。

2 つの関係をよく使います。

\[ \cos\theta = \sin(\theta + 90°), \qquad -\sin\theta = \sin(\theta + 180°) \]

1 つ目の式は、cos の波が sin の波を 90° 進めたものであることを表しています。第9回で、コイルとコンデンサの電流が電圧と 90° ずれる理由を説明するときに使います。