第12回 二相回路¶
この回の位置づけ
シラバス(電気回路III):多相交流5(配布資料)。二相回路について学ぶ。
必要な準備:第8回
この回の目標:二相交流の性質を三相交流と対比して説明でき、二相 3 線式の線間電圧と中性線電流を計算できる。
多相交流と二相交流¶
位相の異なる複数の交流を組にしたものを、まとめて 多相交流 と呼びます。\(n\) 個の相を持つ対称多相交流では、隣り合う相の位相差は \(\dfrac{360°}{n}\) です。三相なら 120°、六相なら 60° です。
二相交流 は、この規則の例外です。規則どおりなら位相差は 180° になりますが、それは単に逆向きの単相交流にすぎません。二相交流と呼ばれているのは、大きさが等しく、位相が 90° ずれた 2 つの交流の組です。
これは、対称四相交流(位相差 90° の 4 つの相)のうち、隣り合う 2 つだけを取り出したものと見ることができます。そのため、三相交流とは性質の異なる点があります。
三相交流との違い¶
三相では \(\dot{E}_a + \dot{E}_b + \dot{E}_c = 0\) でした。二相では
となり、和が 0 になりません。 直角に交わる 2 本の矢印の和は、正方形の対角線にあたり、大きさは \(\sqrt{2}\) 倍です。
| 対称三相 | 二相 | |
|---|---|---|
| 相の数 | 3 | 2 |
| 位相差 | 120° | 90° |
| 各相の和 | 0 | \(\sqrt{2}\) 倍(0 にならない) |
| 平衡時の中性線電流 | 0 | 相電流の \(\sqrt{2}\) 倍 |
| 線間電圧 | 相電圧の \(\sqrt{3}\) 倍 | 相電圧の \(\sqrt{2}\) 倍 |
| 瞬時電力の合計 | 一定 | 一定 |
| 回転磁界 | 作れる | 作れる |
二相 3 線式¶
2 つの相の片側の端子を共通の線(中性線)にまとめ、3 本の線で送る方式を 二相 3 線式 と呼びます。
線間電圧:外側の 2 本の線の間の電圧は、2 つの相電圧の差です。
中性線の電流:平衡した負荷(各相の電流の大きさが \(I\) で、位相差が 90°)をつなぐと、中性線には 2 つの相電流の和が流れます。
三相では平衡時に中性線の電流が 0 になり、中性線を細くしたり省いたりできましたが、二相 3 線式では、中性線にほかの線より大きな電流が流れます。中性線をほかの線より太くする必要があり、送電の方式としては三相より不利です。
シミュレータの点線が、2 つの相の和(中性線の電流)です。2 つの大きさを等しくすると、和の大きさは 1 相の \(\sqrt{2}\) 倍になります。
2 つの相を完全に分けて 4 本の線で送る方式(二相 4 線式)もあります。この場合は、独立した 2 つの単相回路として扱えます。
二相交流の電力¶
平衡した二相回路の瞬時電力の合計も、三相と同じく一定になります。各相の瞬時電力の脈動分は、2 倍の周波数で変化します。相の位相差が 90° なら、脈動分の位相差は 180° になり、ちょうど逆向きで打ち消し合います。
単純な例として、各相に抵抗をつないだ場合、\(p_a\) は \(\sin^2\omega t\) に、\(p_b\) は \(\cos^2\omega t\) に比例し、\(\sin^2\omega t + \cos^2\omega t = 1\) なので和は一定です。
二相交流の使いみち¶
二相交流は、送電にはほとんど使われていませんが、次の場面で現れます。
単相モーターの始動:第13回で見るように、位相の 90° ずれた 2 つの電流を、直角に置いた 2 つのコイルに流すと、回転する磁界ができます。家庭用の扇風機や洗濯機のモーターは、単相の電源からコンデンサを使って位相のずれた電流を作り、二相に近い状態にして回しています。
三相と二相の変換(スコット結線):2 台の単相変圧器を特別なつなぎ方にすると、三相交流を二相交流に変換できます。一方の変圧器(主座)の一次巻線の中点に、もう一方の変圧器(T 座)をつなぎ、T 座の巻数を主座の \(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\) 倍にします。三相の線間電圧が作る正三角形で、底辺とその垂線(高さは底辺の \(\dfrac{\sqrt{3}}{2}\) 倍)が直角に交わることを利用しています。
スコット結線は、交流の電気鉄道の変電所で使われています。電車は単相の大きな負荷なので、三相のうちの 1 相だけから取ると、電力系統に大きな不平衡を生じます。スコット結線で三相を二相に変換し、2 つの相を上り線と下り線(あるいは変電所の両側の区間)に振り分ければ、2 つの負荷が等しいとき、三相側は平衡します。
制御用の小型モーターやセンサ:回転角を検出するレゾルバや、二相のステッピングモーターなどは、90° ずれた 2 つの信号を使います。
まとめ¶
- 二相交流は、大きさが等しく位相が 90° ずれた 2 つの交流。
- 2 つの相の和は 0 にならず、大きさは \(\sqrt{2}\) 倍。
- 二相 3 線式:線間電圧は \(\sqrt{2}E\)、平衡時の中性線電流は \(\sqrt{2}I\)。
- 瞬時電力の合計は一定で、回転磁界を作れる。
- スコット結線で三相と二相を相互に変換できる。