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第10回 節点電圧方程式

この回の位置づけ

シラバス(電気回路II):線形回路の解析③(配布資料)。節点電圧とその性質を学んだ後、節点電圧方程式の組み立て方を学ぶ。

必要な準備:第8回、第9回

この回の目標:任意の回路について、節点電圧方程式を回路図から直接書き下せる。閉路電流方程式とどちらが有利かを判断できる。

節点電圧とは

回路の節点の 1 つを電位の基準(0 V)に選びます。これを 基準節点 と呼びます。残りの各節点の、基準節点に対する電位を 節点電圧 と呼びます。

各地点の標高がわかれば、どの 2 地点の間の高低差もわかります。同じように、節点電圧がすべて決まれば、どの枝の電圧も 2 つの節点電圧の差として求まり、枝の電流もオームの法則から求まります。

節点電圧には次の性質があります。

  • 枝の電圧を節点電圧の差で表せば、電圧則は自動的に満たされる(一周すれば、標高の差の合計は 0 になる)。
  • したがって、残る条件は電流則だけで、基準以外の節点の数(\(n - 1\))だけ式を立てれば足りる。

閉路電流方程式と、役割がちょうど入れかわっています。

方程式の形

基準節点のほかに 2 つの節点を持つ回路で考えます。

節点 ① で電流則を立てます。「流れ出る電流の合計 = 電流源から流れ込む電流」と書くと

\[ \frac{V_1}{R_1} + \frac{V_1 - V_2}{R_2} = J_1 \]

です。左辺第 1 項は \(R_1\) を通って基準節点へ流れ出る電流、第 2 項は \(R_2\) を通って節点 ② へ流れ出る電流です。節点 ② でも同様に

\[ \frac{V_2 - V_1}{R_2} + \frac{V_2}{R_3} = J_2 \]

です。コンダクタンス \(G = 1/R\) を使って整理すると

\[ \begin{bmatrix} G_1 + G_2 & -G_2 \\ -G_2 & G_2 + G_3 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} V_1 \\ V_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} J_1 \\ J_2 \end{bmatrix} \]

となります。これが 節点電圧方程式(節点方程式)です。

回路図から直接書き下す規則

交流回路にも使えるように、アドミタンスで書きます。

係数の決め方

  • 対角の要素 \(\dot{Y}_{ii}\)(自己アドミタンス):節点 \(i\) につながるすべての枝のアドミタンスの 合計。
  • 対角以外の要素 \(\dot{Y}_{ij}\)(相互アドミタンス):節点 \(i\) と節点 \(j\) を直接結ぶ枝のアドミタンスに マイナス をつけたもの。直接結ぶ枝がなければ 0。
  • 右辺 \(\dot{J}_i\):節点 \(i\) に流れ込む電流源の電流の合計(流れ出る向きなら負)。

閉路電流方程式の規則と比べると、次の入れかえになっています。

閉路電流方程式 節点電圧方程式
未知数:閉路電流 未知数:節点電圧
係数:インピーダンス 係数:アドミタンス
対角:閉路を一周するインピーダンスの和 対角:節点に集まるアドミタンスの和
対角以外:共有する枝のインピーダンス 対角以外:2 節点を結ぶ枝のアドミタンス
右辺:閉路内の電圧源 右辺:節点に流れ込む電流源
式の数:\(b - n + 1\) 式の数:\(n - 1\)

係数行列は、ここでも左右対称になります。

数値例(シミュレータの初期設定)

\(J_1 = 3\) A、\(J_2 = 1\) A、\(R_1 = 4\) Ω、\(R_2 = 2\) Ω、\(R_3 = 4\) Ω のとき、\(G_1 = 0.25\)、\(G_2 = 0.5\)、\(G_3 = 0.25\) S なので

\[ \begin{bmatrix} 0.75 & -0.5 \\ -0.5 & 0.75 \end{bmatrix} \begin{bmatrix} V_1 \\ V_2 \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} 3 \\ 1 \end{bmatrix} \]

行列式は \(0.75^2 - 0.5^2 = 0.3125\)。クラメルの公式から

\[ V_1 = \frac{3 \times 0.75 - (-0.5) \times 1}{0.3125} = 8.8\ \text{V}, \qquad V_2 = \frac{0.75 \times 1 - (-0.5) \times 3}{0.3125} = 7.2\ \text{V} \]

検算:節点 ① から流れ出る電流は \(8.8/4 + (8.8 - 7.2)/2 = 2.2 + 0.8 = 3\) A で、\(J_1\) に一致します。

電圧源を含む場合

節点電圧方程式は電流則の式なので、電圧源があると、そこを流れる電流がわからず、そのままでは式が立てられません。対処は 2 通りあります。

  • 電圧源に直列の抵抗があれば、等価変換で電流源(\(J = E/r\) と並列抵抗 \(r\))に直してから立てる。
  • 電圧源の一端が基準節点につながっていれば、他端の節点電圧は電圧源の値そのものなので、未知数が 1 つ減る。

例:2 つの電圧源を持つ回路

電気回路I 第5回の回路(\(E_1 = 10\) V と \(R_1 = 2\) Ω、\(E_2 = 4\) V と \(R_2 = 4\) Ω、中央に \(R_3 = 6\) Ω)は、下側の線を基準にすると、未知の節点は上側の 1 つだけです。2 つの電源を電流源に直すと、\(J_1 = 10/2 = 5\) A、\(J_2 = 4/4 = 1\) A が節点に流れ込み

\[ \left(\frac{1}{2} + \frac{1}{4} + \frac{1}{6}\right) V = 5 + 1 \quad\Longrightarrow\quad V = \frac{6}{0.9167} = 6.55\ \text{V} \]

\(R_3\) の電流は \(6.55 / 6 = 1.09\) A で、網目電流法、重ね合わせの理、テブナンの定理による結果と一致します。網目電流法では 2 元連立方程式でしたが、節点電圧法では式が 1 本で済みました。

この形の式(並列につながった枝の電圧 = 各枝の「起電力 × アドミタンス」の和 ÷ アドミタンスの和)を ミルマンの定理 と呼びます。電気回路III の不平衡三相回路で使います。

どちらの方法を選ぶか

  • 式の数が少ないほう を選ぶ。閉路電流法は \(b - n + 1\) 本、節点電圧法は \(n - 1\) 本。
  • 電圧源が多い 回路は閉路電流法、電流源が多い 回路は節点電圧法が立てやすい。
  • 並列の枝が多い回路(節点が少ない)は節点電圧法、直列の素子が多い回路(網目が少ない)は閉路電流法が向いている。

電子回路の解析やコンピュータによる回路シミュレーションでは、節点電圧法を基本にした方法が広く使われています。規則が単純で、平面に描けない回路にもそのまま使えるからです。

まとめ

  • 節点電圧を未知数にすると、電圧則は自動的に満たされ、電流則の式だけを \(n - 1\) 本立てればよい。
  • 対角要素は節点に集まるアドミタンスの和、対角以外は 2 節点を結ぶ枝のアドミタンスにマイナス、右辺は流れ込む電流源の和。
  • 閉路電流方程式とは、インピーダンスとアドミタンス、電圧と電流が入れかわった双対の関係にある。

練習