第14回 まとめと試験対策¶
この回の位置づけ
シラバス(電気回路III):臨時試験(授業内試験)。まとめ、臨時試験(授業内試験)と解説、質疑応答。成績はこの試験のみで評価される。
この回の目標:第2〜13回の内容を、式を選んで最後まで計算でき、意味を説明できる状態にする。
電気回路III の全体像¶
| 主題 | 中心になる考え方 | 回 |
|---|---|---|
| 過渡現象 | 解 = 定常解 + 過渡解。\(i_L\) と \(v_C\) は連続。\(s\) 領域では \(R\)、\(sL\)、\(1/(sC)\) | 2〜5 |
| ひずみ波交流 | 正弦波の和に分け、次数ごとに解いて足す | 6、7 |
| 多相交流 | 対称性を使って 1 相分に帰着させる。崩れたら回路網として解く | 8〜13 |
公式の整理¶
過渡現象¶
| 項目 | 式 |
|---|---|
| 1 階の回路の解 | \(y(t) = y(\infty) + \{y(0^+) - y(\infty)\}e^{-t/\tau}\) |
| 時定数 | R–C:\(\tau = RC\) / R–L:\(\tau = L/R\) |
| R–L–C 直列 | \(\alpha = R/(2L)\)、\(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\)、臨界抵抗 \(2\sqrt{L/C}\) |
| ラプラス変換 | \(1 \to \dfrac{1}{s}\)、\(e^{-at} \to \dfrac{1}{s + a}\)、\(\dfrac{df}{dt} \to sF(s) - f(0)\) |
| \(s\) 領域の素子 | \(R\)、\(sL\)、\(\dfrac{1}{sC}\) |
ひずみ波交流¶
| 項目 | 式 |
|---|---|
| フーリエ級数 | \(f(t) = a_0 + \sum(a_n\cos n\omega t + b_n\sin n\omega t)\) |
| 方形波(振幅 \(A\)) | \(\dfrac{4A}{\pi}\left(\sin\omega t + \dfrac{1}{3}\sin 3\omega t + \cdots\right)\) |
| 実効値 | \(V = \sqrt{V_0^2 + V_1^2 + V_2^2 + \cdots}\) |
| ひずみ率 | \(\sqrt{V_2^2 + V_3^2 + \cdots}\,/\,V_1\) |
| 電力 | \(P = V_0I_0 + \sum V_nI_n\cos\varphi_n\) |
| 第 \(n\) 次のインピーダンス | \(R + j\left(n\omega L - \dfrac{1}{n\omega C}\right)\) |
多相交流¶
| 項目 | 式 |
|---|---|
| Y 結線 | \(V_l = \sqrt{3}V_p\)、\(I_l = I_p\) |
| Δ 結線 | \(V_l = V_p\)、\(I_l = \sqrt{3}I_p\) |
| Δ → Y の換算 | \(\dot{Z}_Y = \dot{Z}_\Delta / 3\) |
| 三相電力 | \(P = \sqrt{3}V_lI_l\cos\varphi = 3V_pI_p\cos\varphi\) |
| V 結線 | 出力 \(\sqrt{3}VI\)、利用率 86.6%、Δ に対して 57.7% |
| 中性点の電位(中性線なし) | \(\dot{V}_{N'} = \dfrac{\dot{Y}_a\dot{E}_a + \dot{Y}_b\dot{E}_b + \dot{Y}_c\dot{E}_c}{\dot{Y}_a + \dot{Y}_b + \dot{Y}_c}\) |
| 二相 3 線式 | 線間電圧 \(\sqrt{2}E\)、中性線電流 \(\sqrt{2}I\) |
| 同期速度 | \(N_s = 120f/p\) [min⁻¹] |
間違いやすい点¶
初期条件に、連続しない量を使ってしまう
スイッチの前後で連続するのは、インダクタの電流とコンデンサの電圧だけです。コンデンサの電流、インダクタの電圧、抵抗の電圧は、切りかえの瞬間に飛ぶことがあります。
時定数の R に、回路の一部の抵抗だけを使ってしまう
抵抗が複数あるときは、C(または L)の両端から見たテブナン等価回路の内部抵抗を使います。電源を止めて(電圧源は短絡)、素子の位置から回路を見たときの合成抵抗です。
部分分数の係数の符号
\(\dfrac{K}{(s + a)(s + b)}\) の \(\dfrac{1}{s + a}\) の係数は、\(s = -a\) を代入して \(\dfrac{K}{b - a}\) です。代入する値にマイナスがつくことを忘れると、符号が逆になります。逆変換した結果に \(t = 0\) を代入して、初期値と合うかを確かめます。
ひずみ波の実効値を、成分の単純な和にしてしまう
\(V = V_1 + V_3 + V_5\) ではなく、\(V = \sqrt{V_1^2 + V_3^2 + V_5^2}\) です。
高調波のインピーダンスを、基本波と同じ値で計算してしまう
第 \(n\) 次では \(X_L\) が \(n\) 倍、\(X_C\) が \(1/n\) 倍になります。
違う次数のフェーザを足してしまう
周波数の違う成分は、フェーザのままでは足せません。瞬時値の式に戻してから足します。実効値や電力は、2 乗和や次数ごとの和で求めます。
Y 結線と Δ 結線で、\(\sqrt{3}\) をかける量を取り違える
Y 結線は電圧に \(\sqrt{3}\)(線間電圧 = \(\sqrt{3}\) × 相電圧)、Δ 結線は電流に \(\sqrt{3}\)(線電流 = \(\sqrt{3}\) × 相電流)です。「直列になっている量はそのまま、分かれる量に \(\sqrt{3}\)」と覚えます。
三相電力の式で、相電圧と線間電圧を混ぜてしまう
\(\sqrt{3}V_lI_l\cos\varphi\) は線間電圧と線電流、\(3V_pI_p\cos\varphi\) は相電圧と相電流の組で使います。\(3V_lI_l\cos\varphi\) のような組み合わせは誤りです。迷ったら \(3I_p^2R\) で確かめます。
不平衡回路に、平衡回路の式を使ってしまう
\(\sqrt{3}\) 倍の関係や \(\sqrt{3}V_lI_l\cos\varphi\) は、平衡しているときだけ成り立ちます。不平衡なら、相ごとに計算します。
練習問題¶
過渡現象(第2〜5回)¶
ひずみ波交流(第6〜7回)¶
多相交流(第8〜13回)¶
説明できるかを確かめる¶
過渡現象はなぜ起こるのですか
インダクタとコンデンサがエネルギーをためる素子だからです。ためたエネルギーの量は、インダクタの電流とコンデンサの電圧で決まり、エネルギーは一瞬では出し入れできないので、この 2 つの量は急に変われません。スイッチを切りかえて回路の条件が変わっても、新しい定常状態へは時間をかけて移っていくことになり、その途中の変化が過渡現象です。
時定数とは何ですか
1 階の回路の過渡現象の速さを表す時間です。初期値と最終値の差が、時定数だけ時間がたつごとに約 37%(\(1/e\))に減ります。R–C 回路では \(RC\)、R–L 回路では \(L/R\) です。時定数の 5 倍の時間がたてば、変化はほぼ終わります。
RLC 直列回路の応答が、抵抗の大きさによって振動したりしなかったりするのはなぜですか
L と C の間ではエネルギーが行き来しようとし、抵抗はそのエネルギーを熱として奪います。抵抗が小さければ、エネルギーは何度も行き来しながら少しずつ失われるので、振動しながら減衰します。抵抗が大きければ、1 回行き来する前にエネルギーが失われてしまい、振動しません。境目の抵抗は \(2\sqrt{L/C}\) です。
ラプラス変換を使う利点は何ですか
微分が \(s\) のかけ算に変わるので、微分方程式が代数方程式になります。初期条件が式に自動的に組み込まれます。さらに、素子を \(R\)、\(sL\)、\(1/(sC)\) に置きかえれば、微分方程式を立てなくても、直流回路や交流回路と同じ方法で過渡現象が解けます。
ひずみ波の回路計算は、どのような手順で行いますか。なぜその方法が使えるのですか
ひずみ波をフーリエ級数で直流分・基本波・高調波に分け、成分ごとにその周波数でのインピーダンスを使ってフェーザ法で解き、瞬時値に戻して足し合わせます。線形回路では重ね合わせの理が成り立つので、成分ごとに別々に解いて足すことができます。
平衡三相回路で、中性線に電流が流れないのはなぜですか
3 つの相の電流は、大きさが等しく位相が 120° ずつずれています。この 3 つをフェーザとして足すと、正三角形を一周して元に戻るので、和は 0 です。中性線を流れるのは 3 つの電流の和なので、0 になります。
三相交流が電力の送電や動力に使われる理由を挙げてください
3 本の線で 3 相分の電力を送れるので、同じ電力を送るのに必要な電線が単相より少なくて済みます。瞬時電力の合計が一定で脈動しないので、モーターがなめらかに回ります。固定したコイルに流すだけで回転磁界ができるので、構造の簡単なモーターを作れます。
回転磁界は、どのようにしてできますか
軸の方向が 120° ずつ異なる 3 個のコイルに、位相が 120° ずつずれた三相交流を流します。各コイルの磁界は自分の軸の上で伸び縮みするだけですが、電流が最大になるコイルが順に移っていくので、3 つを合成した磁界は、一定の大きさのまま回転します。空間的な配置のずれと時間的な位相のずれが組み合わさった結果です。
3 科目を通して¶
電気回路I から III までの内容は、次の一本の筋でつながっています。
- 回路の素子は、電圧と電流の間の関係式で表される(I)。
- 素子をつなぐと、キルヒホッフの法則が成り立つ(I)。
- 正弦波の定常状態では、\(j\omega\) を使って微分をかけ算に変え、直流回路と同じ計算ができる(I)。
- 大きな回路は、行列の形で機械的に方程式を立てられる。回路の一部は、入口と出口の関係だけで表せる(II)。
- 正弦波でない波形は正弦波の和に分け、定常状態でない変化は \(j\omega\) を \(s\) に広げて扱う。複数の電源は、対称性を使って 1 つ分に帰着させる(III)。
どの段階でも、「複雑な問題を、すでに解ける簡単な問題の組み合わせに直す」という同じ方針がとられています。計算で迷ったときは、公式集と用語集を参照してください。