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第5回 キルヒホッフの法則

この回の位置づけ

シラバス:直流回路⑤(教科書 第5章 5.1–5.2)。キルヒホッフの電流則および電圧則について学ぶ。さらに、直流回路に関する演習(第1章–第4章)を行う。

必要な準備:準備2の連立方程式

この回の目標:電源が複数ある回路について、キルヒホッフの法則から連立方程式を立てて解ける。

合成抵抗では解けない回路

第4回までの方法は、電源が 1 個で、抵抗を順にまとめられる回路にしか使えません。電源が 2 個以上ある回路では、どの抵抗にどちら向きの電流が流れるかさえ、見ただけではわかりません。

キルヒホッフの法則は、どのような回路にも使える 2 つの規則です。この 2 つとオームの法則があれば、原理的にはすべての回路を解けます。

言葉を 3 つ定義しておきます。

  • 節点:3 本以上の導線が集まる接続点。
  • 枝:節点と節点を結ぶ 1 本の道。枝の中では電流はどこでも同じです。
  • 閉路(ループ):ある点から出発して、同じ枝を二度通らずに元の点へ戻る一周の道。ほかの閉路を内側に含まない最小の閉路を 網目(メッシュ)と呼びます。

電流則(第1法則)

キルヒホッフの電流則(KCL)

1 つの節点に流れ込む電流の合計は、その節点から流れ出る電流の合計に等しい。

交差点に入ってくる車の台数と出ていく車の台数は等しい、という関係です。交差点の中に車がたまり続けることも、わいて出ることもないからです。電気では、電荷が節点にたまらず、途中で消えたり生まれたりしないことを表しています。

流れ込む電流を正、流れ出る電流を負として、「節点に集まる電流をすべて足すと 0」と表すこともできます。

\[ \sum I = 0 \]

\(\sum\)(シグマ)は「全部足す」という意味の記号です。

電圧則(第2法則)

キルヒホッフの電圧則(KVL)

1 つの閉路を一周するとき、電源による電位の上昇の合計は、抵抗による電位の下降(電圧降下)の合計に等しい。

山道を一周して出発点に戻ると、上った高さの合計と下った高さの合計は等しくなります。出発点の標高は 1 つに決まっているからです。回路でも、各点の電位は 1 つに決まっているので、一周すれば元の電位に戻ります。

電位の上がり下がりに符号をつけて、「一周の電位の変化をすべて足すと 0」と表すこともできます。

\[ \sum V = 0 \]

符号の決め方

電圧則の式を立てるときに間違いやすいのが符号です。次の手順で決めます。

  1. 各枝の電流の向きを仮に決め、矢印を描きます。
  2. 閉路をたどる向き(時計回りなど)を決めます。
  3. たどりながら、素子ごとに電位の変化を書き出します。
通る素子 たどる向き 電位の変化
電池 − 極から + 極へ \(+E\)(上がる)
電池 + 極から − 極へ \(-E\)(下がる)
抵抗 電流の矢印と同じ向き \(-RI\)(下がる)
抵抗 電流の矢印と逆向き \(+RI\)(上がる)

抵抗の中では、電流は電位の高いほうから低いほうへ流れます。電流と同じ向きにたどれば川を下ることになり、逆向きにたどれば川をさかのぼることになります。

枝電流法:各枝の電流を未知数にする

次の回路を例に、式の立て方を示します。左右に 1 個ずつ電池があり、中央の \(R_3\) を共有しています。

各枝の電流を、\(R_1\) を右向きに流れる \(I_1\)、\(R_2\) を右向きに流れる \(I_2\)、\(R_3\) を下向きに流れる \(I_3\) と決めます。未知数が 3 個なので、式が 3 本必要です。

電流則(上側の節点):\(I_1\) が入り、\(I_2\) と \(I_3\) が出ていきます。

\[ I_1 = I_2 + I_3 \quad \cdots ① \]

電圧則(左の網目を時計回り):\(E_1\) で上がり、\(R_1\) と \(R_3\) で下がります。

\[ E_1 - R_1 I_1 - R_3 I_3 = 0 \quad \cdots ② \]

電圧則(右の網目を時計回り):\(R_2\) で下がり、\(E_2\) を + から − へ通って下がり、\(R_3\) を電流と逆向きに通って上がります。

\[ -R_2 I_2 - E_2 + R_3 I_3 = 0 \quad \cdots ③ \]

この 3 本を連立方程式として解けば、すべての電流が求まります。この方法を 枝電流法 と呼びます。

式は何本立てればよいか

節点が \(n\) 個、枝が \(b\) 本の回路では、電流則から \(n - 1\) 本、電圧則から \(b - (n - 1)\) 本の、互いに独立な式が得られます。合計は枝の本数 \(b\) で、未知数の数と一致します。上の回路は節点 2 個、枝 3 本なので、電流則 1 本と電圧則 2 本です。下側の節点で電流則を立てても ① と同じ式になり、新しい情報は得られません。

網目電流法:未知数を減らす

枝電流法は未知数が多くなりがちです。網目電流法 は、各網目をぐるぐる回る仮想的な電流(網目電流)を未知数に選ぶことで、未知数を減らす方法です。

シミュレータの紫の矢印が網目電流です。左の網目を回る電流を \(I_1\)、右の網目を回る電流を \(I_2\) とし、どちらも時計回りに決めます。2 つの網目が共有する \(R_3\) には、\(I_1\) が下向きに、\(I_2\) が上向きに流れるので、差し引き \(I_1 - I_2\) が下向きに流れます。こう置くと、電流則は自動的に満たされ、電圧則だけを立てれば済みます。

左の網目(時計回り):

\[ E_1 - R_1 I_1 - R_3 (I_1 - I_2) = 0 \]

右の網目(時計回り):

\[ -R_2 I_2 - E_2 - R_3 (I_2 - I_1) = 0 \]

未知数ごとに整理すると、次の形になります。

\[ \begin{cases} (R_1 + R_3)\, I_1 - R_3\, I_2 = E_1 \\ -R_3\, I_1 + (R_2 + R_3)\, I_2 = -E_2 \end{cases} \]

この式には規則性があり、慣れると回路図から直接書き下せます。

  • 自分の網目電流の係数は、その網目に含まれる抵抗の合計。
  • 相手の網目電流の係数は、共有している抵抗にマイナスをつけたもの(網目電流の向きをすべて時計回りにそろえた場合)。
  • 右辺は、その網目の中の起電力の合計(網目電流を流そうとする向きなら正、さまたげる向きなら負)。

数値例

\(E_1 = 10\) V、\(E_2 = 4\) V、\(R_1 = 2\) Ω、\(R_2 = 4\) Ω、\(R_3 = 6\) Ω のとき

\[ \begin{cases} 8 I_1 - 6 I_2 = 10 \\ -6 I_1 + 10 I_2 = -4 \end{cases} \]

これを解くと \(I_1 \approx 1.73\) A、\(I_2 \approx 0.636\) A で、\(R_3\) を流れる電流は \(I_1 - I_2 \approx 1.09\) A(下向き)です。解く過程は準備2に示しています。

検算として左の網目の電圧則に代入すると、\(2 \times 1.727 + 6 \times 1.091 = 3.45 + 6.55 = 10\) V となり、\(E_1\) に一致します。

シミュレータで \(E_2\) を大きくしていくと、\(I_2\) が負になります。これは、右の枝の電流が仮定と逆向き、つまり \(E_2\) の + 極から電流が流れ出していることを表します。\(E_2\) が小さい間は、\(E_1\) が \(E_2\) を充電している状態です。

解く手順のまとめ

  1. 節点と網目を確認し、網目電流の向きを決める(すべて時計回りにそろえると間違いが減ります)。
  2. 網目ごとに電圧則の式を立てる。
  3. 連立方程式を解く。
  4. 網目電流から各枝の電流を求める(共有する枝は網目電流の差)。
  5. どれか 1 つの閉路か節点で検算する。

練習

第1〜4回の内容の練習問題です。