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第6回 並列共振

この回の位置づけ

シラバス(電気回路II):基本的な交流回路とその周波数特性③ −並列共振−(教科書 第22章 22.1–22.4)。R–L–C 並列共振回路のベクトル軌跡、周波数特性について学ぶ。また、反共振現象及びバンドパス特性を学ぶ。

必要な準備:第5回

この回の目標:並列共振(反共振)で何が起こるかを直列共振と対比して説明でき、共振周波数と Q を計算できる。

直列共振との対応

R、L、C を並列につないだ回路では、アドミタンスが足し算になります。

\[ \dot{Y} = \frac{1}{R} + j\left(\omega C - \frac{1}{\omega L}\right) \]

この式は、直列共振回路の \(\dot{Z} = R + j\left(\omega L - \dfrac{1}{\omega C}\right)\) と同じ形をしています。次の入れかえをすれば、第5回の結果がすべてそのまま使えます。

直列共振回路 並列共振回路
インピーダンス \(\dot{Z}\) アドミタンス \(\dot{Y}\)
電圧 電流
\(R\) \(1/R\)
\(L\) \(C\)
\(C\) \(L\)

このように、式の形が同じで役割が入れかわった関係を 双対 と呼びます。

ベクトル軌跡

\(\dot{Y}\) の軌跡は、点 \(\dfrac{1}{R}\) を通って実軸に垂直な直線です。\(\dot{Z} = 1/\dot{Y}\) の軌跡は、直径 \(R\) の円です。

虚部が 0 になる周波数は、直列共振と同じです。

\[ \omega_0 C = \frac{1}{\omega_0 L} \quad\Longrightarrow\quad f_0 = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}} \]

このとき \(\dot{Y}\) の大きさが最小、つまり インピーダンスが最大(\(\dot{Z} = R\))になります。直列共振ではインピーダンスが最小になったのとは逆なので、並列共振を 反共振 とも呼びます。

直列共振 並列共振(反共振)
共振時のインピーダンス 最小(\(R\)) 最大(\(R\))
一定電圧を加えたときの電流 共振時に最大 共振時に最小
\(f < f_0\) での性質 容量性 誘導性
\(f > f_0\) での性質 誘導性 容量性
拡大される量 L と C の電圧(\(Q\) 倍) L と C の電流(\(Q\) 倍)

\(f_0\) より低い周波数で誘導性になるのは、周波数が低いとインダクタのほうが電流を通しやすく、電流の大部分がインダクタを流れるからです。

共振時に起こっていること

共振のとき、インダクタの電流 \(\dot{I}_L\) とコンデンサの電流 \(\dot{I}_C\) は、大きさが等しく向きが逆です。2 つは打ち消し合い、電源から流れ込む電流は抵抗の分 \(V/R\) だけになります。

電源から見ると電流がほとんど流れていませんが、L と C の間では、大きな電流が行ったり来たりしています。その大きさは

\[ I_L = I_C = \frac{V}{\omega_0 L} = \frac{R}{\omega_0 L}\cdot\frac{V}{R} = Q \times (\text{電源の電流}) \]

で、並列共振回路の \(Q\) は

\[ Q = \frac{R}{\omega_0 L} = \omega_0 C R = R\sqrt{\frac{C}{L}} \]

です。直列共振の \(Q\) と比べると、\(R\) が分子にあります。並列回路では、並列の抵抗が大きいほど抵抗を流れる電流(=損失)が小さく、共振が鋭くなるからです。

たとえ:2 人で押し合うブランコ

ブランコを揺らし続けるには、摩擦で失われる分を補うだけの小さな力で足ります。ブランコ自体は大きく揺れていますが、外から与える力はわずかです。並列共振回路では、L と C の間でエネルギーが大きく行き来していて、電源は抵抗で失われる分だけを補っています。

帯域幅は、直列共振と同じく \(B = f_0/Q\) です。\(|\dot{Z}|\) が最大値 \(R\) の \(1/\sqrt{2}\) になる 2 つの周波数の差で、ベクトル軌跡の円のいちばん上と下の点にあたります。

バンドパス特性とその利用

並列共振回路は、\(f_0\) の近くでだけ高いインピーダンスを示します。一定の電流を流し込むと、\(f_0\) の近くの周波数でだけ大きな電圧が現れます。この性質も、特定の周波数を選び出すバンドパス特性として使われます。

逆に、信号の通り道に直列に入れると、\(f_0\) の成分だけをさえぎる回路になります。電源に混ざった特定の周波数のノイズを取り除く用途などに使われます。

実際のコイルを使った並列共振回路

実際のコイルには巻線の抵抗 \(r\) があります。そこで、「\(r\) と \(L\) の直列」に \(C\) を並列につないだ回路が、実用上よく現れます。

この回路のアドミタンスは

\[ \dot{Y} = \frac{1}{r + j\omega L} + j\omega C = \frac{r}{r^2 + \omega^2 L^2} + j\left(\omega C - \frac{\omega L}{r^2 + \omega^2 L^2}\right) \]

です。虚部が 0 になる条件から、共振周波数は

\[ \omega_0 = \sqrt{\frac{1}{LC} - \frac{r^2}{L^2}} \]

となります。\(r\) が小さければ第 2 項は無視でき、\(\omega_0 \approx \dfrac{1}{\sqrt{LC}}\) です。共振時のインピーダンスは、\(\dot{Y}\) の実部の逆数から

\[ Z_0 = \frac{r^2 + \omega_0^2 L^2}{r} = \frac{L}{Cr} \]

となります。コイルの抵抗 \(r\) が小さいほど、共振時のインピーダンスは大きくなります。直列の小さな抵抗 \(r\) が、並列の大きな抵抗 \(\dfrac{L}{Cr}\) と同じ働きをしていると見ることもできます(電気回路I 第11回の直列・並列の等価変換)。

数値例

\(r = 10\) Ω、\(L = 10\) mH のコイルに \(C = 1\) μF を並列につなぎます。

  • \(\dfrac{1}{LC} = 10^8\)、\(\dfrac{r^2}{L^2} = 10^6\) なので \(\omega_0 = \sqrt{10^8 - 10^6} = 9950\) rad/s、\(f_0 = 1584\) Hz(\(r\) を無視した 1592 Hz とほぼ同じ)
  • \(Z_0 = \dfrac{L}{Cr} = \dfrac{10^{-2}}{10^{-6} \times 10} = 1000\) Ω

10 Ω の抵抗しか含まない回路が、共振時には 1000 Ω の抵抗に見えます。

まとめ

  • 並列共振回路は直列共振回路と双対。\(\dot{Y}\) の軌跡が直線、\(\dot{Z}\) の軌跡が円。
  • 共振(反共振)周波数 \(f_0 = 1/(2\pi\sqrt{LC})\) でインピーダンスが最大。
  • \(Q = R/(\omega_0 L) = \omega_0 CR\)。L と C には電源電流の \(Q\) 倍の電流が循環する。
  • 実際のコイル(抵抗 \(r\))を使うと、共振時のインピーダンスは \(L/(Cr)\)。

練習