準備1 数・文字式・単位¶
電気回路の計算の大半は、かけ算とわり算でできています。このページでは、その計算を書き表すための約束ごと(文字式、指数、単位の接頭語)を確認します。
文字を使って式を書く理由¶
電気回路では「電圧は抵抗と電流をかけたものに等しい」という関係を \(V = R \times I\) と書きます。文字は「あとで数を入れるための箱」です。\(R\) の箱に 2、\(I\) の箱に 3 を入れれば \(V = 2 \times 3 = 6\) になります。
文字式には、書き方の省略ルールがあります。
- かけ算の記号は省略します。\(R \times I\) は \(RI\) と書きます。
- わり算は分数で書きます。\(V \div R\) は \(\dfrac{V}{R}\) と書きます。
- 同じものを 2 回かけるときは右肩に小さく 2 を書きます。\(I \times I\) は \(I^2\)(アイの2乗)です。
式の読み方の例
\(P = I^2 R\) は「\(P\) は、\(I\) を 2 回かけたものに \(R\) をかけた値」と読みます。\(I = 3\)、\(R = 2\) なら \(P = 3 \times 3 \times 2 = 18\) です。
式を変形する¶
\(V = RI\) という 1 つの式から、\(I\) を求める式や \(R\) を求める式を作れます。使う規則は「等号の両側に同じ操作をしても、等しい関係は保たれる」の 1 つだけです。天びんの両方の皿に同じ重さを足しても、つり合いが崩れないのと同じです。
\(V = RI\) の両辺を \(R\) で割ると、右辺の \(R\) が消えて
になります。同じように両辺を \(I\) で割れば \(R = \dfrac{V}{I}\) が得られます。3 つの式を別々に暗記する必要はなく、1 つ覚えて変形すれば足ります。
分数の計算¶
並列回路の計算では、分数のたし算が繰り返し出てきます。分数のたし算は、分母をそろえてから分子を足します。
分母をそろえる操作は、6 等分したピザ 1 切れと 3 等分したピザ 1 切れを合わせるとき、3 等分のほうをさらに半分に切って「6 等分の 2 切れ」と数え直すことにあたります。
「逆数」も使います。ある数の逆数とは、1 をその数で割った値です。2 の逆数は \(\frac{1}{2}\)、\(\frac{1}{2}\) の逆数は 2 です。
10 の何乗という書き方¶
電気回路に出てくる数は、0.000001 から 1000000 まで幅があります。0 を並べて書くと数え間違えるので、「10 を何回かけたか」で表します。
| 書き方 | 意味 | 値 |
|---|---|---|
| \(10^3\) | 10 を 3 回かける | 1000 |
| \(10^6\) | 10 を 6 回かける | 1000000 |
| \(10^0\) | 何もかけない | 1 |
| \(10^{-3}\) | 10 で 3 回割る | 0.001 |
| \(10^{-6}\) | 10 で 6 回割る | 0.000001 |
右肩の数(指数)がマイナスのときは「割る回数」を表します。かけ算では指数どうしを足し、わり算では引きます。たとえば \(10^3 \times 10^{-6} = 10^{3 + (-6)} = 10^{-3}\) です。
単位と接頭語¶
量には単位がつきます。この講義で使う主な単位は次のとおりです。
| 量 | 記号 | 単位 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 電圧 | \(V\)、\(E\) | V | ボルト |
| 電流 | \(I\) | A | アンペア |
| 抵抗 | \(R\) | Ω | オーム |
| 電力 | \(P\) | W | ワット |
| 電荷 | \(Q\) | C | クーロン |
| 静電容量 | \(C\) | F | ファラド |
| インダクタンス | \(L\) | H | ヘンリー |
| 周波数 | \(f\) | Hz | ヘルツ |
大きな数や小さな数は、単位の前に接頭語をつけて表します。「1000 メートル」を「1 キロメートル」と呼ぶのと同じしくみです。
| 接頭語 | 読み方 | 倍率 | 例 |
|---|---|---|---|
| M | メガ | \(10^6\) | 1 MΩ = 1000000 Ω |
| k | キロ | \(10^3\) | 4.7 kΩ = 4700 Ω |
| m | ミリ | \(10^{-3}\) | 20 mA = 0.02 A |
| μ | マイクロ | \(10^{-6}\) | 100 μF = 0.0001 F |
| n | ナノ | \(10^{-9}\) | 10 nF = 0.00000001 F |
| p | ピコ | \(10^{-12}\) | 22 pF |
計算する前に接頭語を外す
公式に数を入れるときは、接頭語を \(10\) の何乗に直してから計算します。5 V を 2 kΩ で割るときは \(5 \div 2 = 2.5\) A ではなく、\(5 \div (2 \times 10^3) = 2.5 \times 10^{-3}\) A = 2.5 mA です。「V ÷ kΩ = mA」という組み合わせは頻繁に使うので、覚えておくと計算が速くなります。
平方根¶
\(\sqrt{9}\) は「2 回かけると 9 になる数」で、答えは 3 です。交流回路では \(\sqrt{2} \approx 1.414\) と \(\sqrt{3} \approx 1.732\) がよく出てきます。
直角三角形では、直角をはさむ 2 辺の長さを \(a\)、\(b\)、斜めの辺の長さを \(c\) とすると
が成り立ちます(三平方の定理)。2 辺が 3 と 4 なら、斜辺は \(\sqrt{9 + 16} = \sqrt{25} = 5\) です。この「3・4・5」の組み合わせは、交流回路の例題に繰り返し登場します。