第12回 2ポート回路②(Y パラメータ)¶
この回の位置づけ
シラバス(電気回路II):2ポート回路②(教科書 続 第2章)。2ポート回路の Y パラメータ表現式と算定法を学び、2ポート回路の並列接続回路の解析法を学ぶ。
この回の目標:与えられた回路の Y パラメータを求められ、Z パラメータとの関係を説明できる。
Y パラメータ¶
電圧を決めたときの電流を表す形です。
1ポート回路の \(\dot{I} = \dot{Y}\dot{V}\) を 2 つのポートに広げた式で、4 つの係数はアドミタンスの単位(S)を持ちます。
求め方:片方のポートを短絡する¶
片方の電圧を 0 にする(そのポートを 短絡 する)と、パラメータを 1 つずつ取り出せます。
短絡した状態で測るので、Y パラメータを 短絡アドミタンスパラメータ とも呼びます。Z パラメータの「開放して測る」と対になっています。
π 形回路の Y パラメータ¶
シミュレータの回路は、並列の枝 \(\dot{Y}_a\)、\(\dot{Y}_b\) と直列の枝 \(\dot{Y}_c\) を π の字につないだ π 形回路 です(シミュレータでは枝の値を抵抗で指定していて、\(Y = 1/R\) です)。
出力を短絡すると、\(\dot{Y}_b\) の両端の電圧が 0 になり、そこには電流が流れません。入力から見ると \(\dot{Y}_a\) と \(\dot{Y}_c\) が並列なので、\(\dot{I}_1 = (\dot{Y}_a + \dot{Y}_c)\dot{V}_1\)。\(\dot{Y}_c\) を通った電流 \(\dot{Y}_c\dot{V}_1\) は、短絡した線を通って出力端子から 流れ出ます。\(\dot{I}_2\) は流れ込む向きを正としているので、\(\dot{I}_2 = -\dot{Y}_c\dot{V}_1\) です。入力を短絡した場合も同様に考えると
が得られます。これは第10回の節点電圧方程式の規則そのものです。対角が「節点に集まるアドミタンスの和」、対角以外が「2 つの節点を結ぶ枝のアドミタンスにマイナス」になっています。
T 形回路には Z パラメータ、π 形回路には Y パラメータが、もっとも簡単な形で対応します。
数値例(シミュレータの初期設定)
左の並列枝 20 Ω、右の並列枝 10 Ω、中央の直列枝 5 Ω の π 形回路では、\(Y_a = 0.05\)、\(Y_b = 0.1\)、\(Y_c = 0.2\) S なので
出力を開放して(\(I_2 = 0\))\(V_1 = 10\) V を加えると、2 本目の式 \(0 = -0.2 \times 10 + 0.3 V_2\) から \(V_2 = 6.67\) V です。直接計算しても、5 Ω と 10 Ω の分圧で \(10 \times \dfrac{10}{5 + 10} = 6.67\) V となり一致します。
Z パラメータとの関係¶
\([\dot{V}] = [\dot{Z}][\dot{I}]\) と \([\dot{I}] = [\dot{Y}][\dot{V}]\) は、同じ回路の同じ関係を、逆向きに書いたものです。したがって、2 つの行列は互いに 逆行列 の関係にあります。
2 行 2 列の逆行列の公式(準備5)から
です。
要素ごとの逆数ではない
\(\dot{Y}_{11}\) は \(1/\dot{Z}_{11}\) ではありません。\(\dot{Z}_{11}\) は出力を 開放 したときの入力インピーダンス、\(\dot{Y}_{11}\) は出力を 短絡 したときの入力アドミタンスで、測る条件が違います。行列全体として逆の関係にあります。
第11回の T 形回路(\(Z_{11} = 40\)、\(Z_{12} = 30\)、\(Z_{22} = 50\) Ω)では、行列式が \(40 \times 50 - 30^2 = 1100\) なので、\(Y_{11} = 50/1100 = 0.0455\) S です。\(1/Z_{11} = 0.025\) S とは一致しません。
相反な回路では、\(\dot{Z}_{12} = \dot{Z}_{21}\) から \(\dot{Y}_{12} = \dot{Y}_{21}\) も成り立ちます。
並列接続¶
2 つの 2ポート回路の入力どうし、出力どうしをそれぞれ並列につなぐ接続を 並列接続 と呼びます。両方の回路に同じ電圧 \(\dot{V}_1\)、\(\dot{V}_2\) がかかり、電流は 2 つの回路の和になります。したがって、全体の Y パラメータは、それぞれの Y パラメータの行列の和です。
並列につないだ 2 個の抵抗の合成コンダクタンスが \(G_1 + G_2\) になるのと同じ関係です。
| 接続 | 共通になる量 | 足し合わせるパラメータ |
|---|---|---|
| 直列接続 | 電流 | Z パラメータ |
| 並列接続 | 電圧 | Y パラメータ |
増幅器の出力の一部を入力に戻す帰還回路の解析などで、並列接続と Y パラメータが使われます。
まとめ¶
- Y パラメータ:\([\dot{I}] = [\dot{Y}][\dot{V}]\)。片方のポートを短絡して求める。
- π 形回路では \(\dot{Y}_{11} = \dot{Y}_a + \dot{Y}_c\)、\(\dot{Y}_{12} = \dot{Y}_{21} = -\dot{Y}_c\)、\(\dot{Y}_{22} = \dot{Y}_b + \dot{Y}_c\)。
- \([\dot{Y}] = [\dot{Z}]^{-1}\)(行列として逆。要素ごとの逆数ではない)。
- 並列接続では Y パラメータの行列を足す。