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第7回 直流回路の演習

この回の位置づけ

シラバス:演習。直流回路に関する演習(教科書 第1章–第6章)を行い、解説する。

この回の目標:第1〜6回の内容を、問題を見て適切な方法を選び、最後まで計算できる状態にする。

直流回路の全体像

第1〜6回で扱った内容は、次の 3 層に整理できます。上の層は下の層から導かれます。

層 内容 扱った回
基本法則 オームの法則、キルヒホッフの電流則・電圧則 第3回、第5回
基本法則から導かれる公式 直列・並列の合成、分圧・分流、Δ–Y 変換、ブリッジの平衡条件 第3回、第4回
計算を簡単にする定理 重ね合わせの理、テブナン・ノートンの定理、電源の等価変換 第6回

公式を忘れても、基本法則に戻れば導き直せます。分圧の式は「直列では電流が共通」とオームの法則から、並列の合成抵抗は「並列では電圧が共通」と電流則から出てきます。

問題を解くときの手順

  1. 回路図を描き、わかっている値を書き込む。 接頭語(k、m など)はこの時点で確認します。
  2. 求める量に記号をつけ、向きを決める。 向きは仮でかまいません。
  3. 方法を選ぶ。 電源が 1 個で直並列に分解できるなら合成抵抗。電源が複数なら網目電流法か重ね合わせの理。1 個の負荷に注目するならテブナンの定理。
  4. 計算する。 途中の値は 4 桁程度残し、最後に 3 桁に丸めます。
  5. 検算する。 節点で電流則、閉路で電圧則が成り立つかを確かめます。電源が供給する電力と抵抗が消費する電力の合計が等しいことでも確かめられます。

間違いやすい点

並列の合成抵抗で、逆数を取り忘れる

\(\dfrac{1}{R} = \dfrac{1}{6} + \dfrac{1}{3} = \dfrac{1}{2}\) まで計算して、答えを 0.5 Ω としてしまう間違いです。求めたいのは \(R\) なので、最後に逆数を取って 2 Ω とします。並列の合成抵抗は必ずいちばん小さい抵抗より小さくなるので、3 Ω より小さいかどうかで確かめられます。

分流の式で、自分の抵抗を分子に置く

分圧は自分の抵抗が分子、分流は相手の抵抗が分子です。迷ったら極端な場合を考えます。\(R_1\) が非常に大きければ、電流はほとんど \(R_1\) を通らないはずです。\(I_1 = \dfrac{R_2}{R_1 + R_2} I\) は \(R_1\) が大きいほど小さくなるので、こちらが正しい式だと判断できます。

接頭語を外さずに計算する

12 V を 4 kΩ で割ると 3 A ではなく 3 mA です。V ÷ kΩ = mA、mA × kΩ = V の組み合わせを使うか、すべて基本単位に直してから計算します。

電圧則で、電池の符号を逆にする

たどる向きに沿って − 極から + 極へ通るときが \(+E\)、+ 極から − 極へ通るときが \(-E\) です。電流の向きとは関係なく、電池の極の向きだけで決まります。

重ね合わせの理で、電力を足し合わせる

足し合わせてよいのは電圧と電流です。電力は、足し合わせた後の電流から \(I^2 R\) で計算します。

テブナンの定理で、\(R_0\) を求めるときに負荷を残す

\(E_0\) も \(R_0\) も、負荷を外した状態で求めます。負荷は、等価回路ができあがった後でつなぎます。

例題:3 つの方法で同じ答えを出す

第5回と第6回で使った回路(\(E_1 = 10\) V、\(E_2 = 4\) V、\(R_1 = 2\) Ω、\(R_2 = 4\) Ω、\(R_3 = 6\) Ω)で、\(R_3\) を流れる電流をテブナンの定理でも求めてみます。網目電流法(第5回)と重ね合わせの理(第6回)による答えは、どちらも 1.09 A でした。

\(R_3\) を外して開放電圧を求める:\(R_3\) を外すと、\(E_1\)、\(R_1\)、\(R_2\)、\(E_2\) が 1 つの閉路になります。時計回りの電流は \(\dfrac{E_1 - E_2}{R_1 + R_2} = \dfrac{10 - 4}{2 + 4} = 1\) A。\(R_3\) がつながっていた 2 点間の電圧は、\(E_1\) から \(R_1\) の電圧降下を引いて \(E_0 = 10 - 2 \times 1 = 8\) V。

内部抵抗を求める:\(E_1\) と \(E_2\) を短絡すると、\(R_3\) がつながっていた 2 点から見て \(R_1\) と \(R_2\) が並列です。\(R_0 = \dfrac{2 \times 4}{2 + 4} = 1.33\) Ω。

\(R_3\) をつなぐ:\(I_3 = \dfrac{E_0}{R_0 + R_3} = \dfrac{8}{1.33 + 6} = 1.09\) A。

3 つの方法の答えが一致しました。

練習問題

各ブロックで「次の問題」を押すと、数値や種類が変わります。

基本量とオームの法則(第1〜3回)

直列・並列と分圧・分流(第3回)

直並列・Δ–Y・ブリッジ(第4回)

キルヒホッフの法則と諸定理(第5〜6回)

説明できるかを確かめる

到達目標には「理解し説明できること」とあります。次の問いに、式を使わずに 2〜3 文で答えられるかを試してください。

電位と電圧の違いは何ですか

電位は、基準点から測った各点の電気的な高さです。電圧は 2 点の電位の差です。電流が流れるかどうかを決めるのは電圧であり、基準点をどこに選んでも電圧は変わりません。

並列につなぐと合成抵抗が小さくなるのはなぜですか

電流の通り道が増えるからです。同じ電圧に対して、各枝に流れる電流の合計が全体の電流になるので、枝を増やすほど全体の電流が増え、全体としては抵抗が小さくなったのと同じになります。

キルヒホッフの電流則と電圧則は、それぞれ何が保たれることを表していますか

電流則は、電荷が節点にたまったり消えたりしないこと(電荷の保存)を表します。電圧則は、各点の電位が 1 つに決まっていて、一周すると元の電位に戻ること(エネルギーの保存)を表します。

重ね合わせの理で、働かせない電圧源を短絡するのはなぜですか

電圧源の電圧を 0 にするということは、その両端の電位差を 0 にするということです。電位差が 0 で電流を自由に通す素子は導線なので、短絡に置きかえます。電流源の場合は、電流が 0、つまり電流を通さない素子になるので開放に置きかえます。

テブナンの定理は何の役に立ちますか

回路のうち注目する負荷以外の部分を、電圧源 1 個と抵抗 1 個にまとめられます。負荷の値を変えたときの電流や電力を、回路全体を解き直さずに求められます。最大電力を取り出す負荷の条件も、等価回路の内部抵抗からすぐにわかります。