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第1回 電荷・電流・電圧・電力

この回の位置づけ

シラバス:ガイダンス、直流回路①(教科書 第1章 1.1–1.5)。電荷、電流および電位、電位差、電力の概念、電源(電圧源、電流源)について学ぶ。

必要な準備:準備1 数・文字式・単位

この回の目標:電荷・電流・電位・電圧・電力という 5 つの量が何を表すかを、自分の言葉で説明できる。

電気回路論は何をする学問か

スマートフォンの中でも送電線の中でも、起きていることは「電気を帯びた粒が動く」という 1 つの現象です。しかし粒を 1 個ずつ追いかけて計算することはできません。電気回路論は、この現象を 電圧・電流・抵抗 などの少数の量に置きかえ、それらの関係式だけで回路の動作を予測できるようにした体系です。

地図が現実の地形を道路と交差点の線に単純化しているのと同じように、回路図は現実の配線を「素子」と「それをつなぐ線」に単純化したものです。この単純化があるので、乾電池 1 本の回路と発電所の回路を同じ式で扱えます。

電荷:電気のもとになる量

物質を作っている原子は、プラスの電気を持つ原子核と、マイナスの電気を持つ電子でできています。この「電気の量」を 電荷 と呼び、記号 \(Q\)、単位 C(クーロン)で表します。

電子 1 個の電荷は非常に小さく、約 \(1.6 \times 10^{-19}\) C です。1 C は電子約 \(6.2 \times 10^{18}\) 個分にあたります。金属の導線の中には自由に動ける電子が大量にあり、これが動くことで電気が伝わります。

電流:電荷の流れの勢い

電流 は、導線の断面を 1 秒間に通過する電荷の量です。記号 \(I\)、単位 A(アンペア)で表します。川の流量を「1 秒間にこの橋の下を通る水の量」で測るのと同じ考え方です。

\[ I = \frac{Q}{t} \qquad \text{(1 A = 1 秒間に 1 C が通過)} \]

電流の値を大きくすると、粒の動きが速くなり、同じ時間に通過する電荷が増えます。

電流の向きと電子の向きは逆

電流の向きは「プラスの電荷が動く向き」と決められています。この約束は電子が発見される前に作られました。後になって、金属の中で実際に動いているのはマイナスの電荷を持つ電子で、動く向きは電流と逆であることがわかりました。シミュレータの「電子の動きで表示」にチェックを入れると確認できます。

回路の計算では、電流の向きだけを考えれば足ります。マイナスの粒が左へ動くことと、プラスの粒が右へ動くことは、電荷の移動として同じ結果になるからです。

電流が時間とともに変化するときは、短い時間 \(dt\) の間に通過した電荷 \(dQ\) を使って \(I = \dfrac{dQ}{dt}\) と書きます(準備4)。

電位と電圧:電気的な高さと高さの差

水は高いところから低いところへ流れます。電荷も同じように、電気的に「高い」ところから「低い」ところへ流れます。この電気的な高さを 電位 と呼びます。

2 点の電位の差が 電位差 で、これを 電圧 とも呼びます。記号 \(V\)、単位 V(ボルト)です。水が流れるかどうかを決めるのは高さそのものではなく高さの差であるのと同じく、電流が流れるかどうかを決めるのは電位の差です。両端の電位が同じ導線には電流が流れません。

電池は、低いところに来た電荷を高いところへ持ち上げるポンプの役割をします。電池が電荷を持ち上げる能力を 起電力 と呼び、記号 \(E\) で表します。単位は電圧と同じ V です。

右側の図は、回路を a → b → c → d → a の順に一周したときの電位を、高さとして描いたものです。電池で持ち上げられた電位は、抵抗を通るたびに下がり、一周すると元の高さに戻ります。抵抗で電位が下がることを 電圧降下 と呼びます。

電位の基準

高さを「海抜」で測るように、電位にも基準が必要です。回路では、どこか 1 点を 0 V と決めます(図では点 a)。この基準点を接地(アース、グラウンド)と呼びます。基準をどこに選んでも、2 点間の電圧は変わりません。

電圧の定義を式で書くと、「1 C の電荷を運ぶのに必要な仕事(エネルギー)」です。\(Q\) [C] の電荷を電圧 \(V\) [V] のところへ運ぶのに必要なエネルギーは \(W = QV\) [J](ジュール)で、\(1\ \text{V} = 1\ \text{J/C}\) です。1 kg の荷物を高いところへ運ぶほど多くのエネルギーが必要になるのと同じ関係です。

水の流れとの対応

ここまでの対応関係をまとめます。

電気 水
電荷 \(Q\) [C] 水の量
電流 \(I\) [A] 1 秒あたりに流れる水の量
電位 [V] 高さ(水圧)
電圧 \(V\) [V] 高さの差(水圧の差)
電池(起電力 \(E\)) 水をくみ上げるポンプ
抵抗 \(R\) 細い管、水車
導線 太い管

このたとえには限界もあります。水は管が切れると外へこぼれますが、電荷は導線が切れると流れが止まるだけです。電流が流れ続けるには、出発点に戻ってくる一周の道(閉回路)が必要です。

電力と電力量

水車は、落ちてくる水の量が多いほど、また落差が大きいほど、勢いよく回ります。電気でも同じで、1 秒間にする仕事は電流と電圧の積で決まります。これを 電力 と呼び、記号 \(P\)、単位 W(ワット)で表します。

\[ P = VI \qquad \text{(1 W = 1 秒間に 1 J の仕事)} \]

この式は、電圧の定義(\(V\) = 1 C あたりのエネルギー)と電流の定義(\(I\) = 1 秒あたりの電荷)をかけ合わせると、1 秒あたりのエネルギーになることから得られます。

電力に使った時間をかけたものが 電力量 です。

\[ W = Pt \]

単位は、時間を秒で測れば J(ジュール)、時間で測れば Wh(ワット時)です。\(1\ \text{Wh} = 3600\ \text{J}\) で、電気料金の請求書に載っている kWh はこの 1000 倍です。

抵抗の値を小さくすると、電流が増えて電球が明るくなります。電圧を 2 倍にすると電流も 2 倍になるので、電力は 4 倍になります。この関係は第3回のオームの法則と組み合わせて \(P = \dfrac{V^2}{R} = I^2 R\) と書けます。

電源:電圧源と電流源

回路にエネルギーを供給する素子を 電源 と呼びます。回路理論では、電源を 2 種類の理想的なモデルで表します。

  • 電圧源:つないだ相手が何であっても、両端の電圧を一定に保つ電源。水のたとえでは「決まった高さまで必ず水をくみ上げるポンプ」です。流れる電流は、つないだ相手によって決まります。
  • 電流源:つないだ相手が何であっても、一定の電流を流し続ける電源。「毎秒決まった量の水を必ず送り出すポンプ」です。両端の電圧は、つないだ相手によって決まります。

乾電池や家庭のコンセントは電圧源に近い性質を持っています。電流源は身近な製品としては見かけませんが、太陽電池やトランジスタの動作を表すときに使います。実際の電源がこの理想からどうずれるかは、第2回で扱います。

まとめ

  • 電流は、1 秒間に通過する電荷の量(\(I = Q/t\))。
  • 電位は電気的な高さ、電圧は 2 点の高さの差。電流は電位の高いほうから低いほうへ流れる。
  • 電力は電圧と電流の積(\(P = VI\))、電力量は電力と時間の積(\(W = Pt\))。
  • 電圧源は電圧を、電流源は電流を一定に保つ理想的な電源。

練習

確認:鳥が高圧電線に止まっても感電しないのはなぜですか

鳥の両足は同じ 1 本の電線に触れています。両足の間の電位差がほぼ 0 なので、鳥の体には電流がほとんど流れません。電位そのものが高くても、差がなければ電流は流れないという例です。