第2回 微分方程式の解き方¶
この回の位置づけ
シラバス(電気回路III):過渡現象1(配布資料)。微分方程式の解き方について学ぶ。
必要な準備:準備4 変化の速さと積み重ね、準備6 指数関数と対数
この回の目標:回路の過渡現象に現れる 1 階と 2 階の線形微分方程式を、決まった手順で解ける。
微分方程式とは¶
ふつうの方程式は、条件を満たす 数 を求める問題です。微分方程式 は、条件を満たす 関数(時間とともにどう変化するか)を求める問題で、条件の中に「変化の速さ」(微分)が含まれています。
例として、「変化の速さが、最終値との差に比例する」という条件を式にします。
変形すると \(\dfrac{dy}{dt} = \dfrac{Y - y}{\tau}\) で、\(y\) が最終値 \(Y\) より小さければ増え、差が大きいほど速く増えます。お湯が室温に近づいていく変化、コンデンサが充電されていく変化が、この式で表されます。
灰色の短い線は、その場所での変化の向きを表しています。川の流れの向きを示す矢印のようなもので、どこから出発しても、その場所の矢印に沿って進んでいきます。微分方程式は「各地点での進む向き」を与える規則で、解は「ある地点から出発したときにたどる道すじ」です。出発点(初期値)を変えると道すじは変わりますが、どれも同じ最終値に近づきます。
1 階線形微分方程式の解き方¶
回路の過渡現象で現れる 1 階の微分方程式は、次の形です。
解は、2 つの部分の和になります。
手順 1:定常解を求める¶
十分に時間がたって変化が止まった状態では、\(\dfrac{dy}{dt} = 0\) です。これを方程式に入れると
となります。回路では、直流の定常状態(インダクタは短絡、コンデンサは開放)を解いた値にあたります。
手順 2:過渡解を求める¶
右辺を 0 にした式
を解きます。これは「変化の速さが自分自身の \(-a\) 倍」という条件で、これを満たす関数は指数関数です(準備6)。
\(A\) はまだ決まっていない定数です。
右辺を 0 にする理由は次のとおりです。全体の解 \(y = y_s + y_t\) を元の方程式に代入すると、\(y_s\) がすでに右辺の \(b\) を作り出しているので、\(y_t\) の分は 0 にならなければなりません。過渡解は、外から加える力(右辺)とは無関係に、回路自身の性質だけで決まる変化です。
手順 3:初期条件から定数を決める¶
\(y = \dfrac{b}{a} + A\,e^{-at}\) に \(t = 0\) を代入し、初期値 \(y(0)\) に等しいと置きます。
結果のまとめ¶
時定数を \(\tau = \dfrac{1}{a}\)、最終値を \(y(\infty) = \dfrac{b}{a}\) と書くと、解は次の 1 つの形にまとまります。
初期値、最終値、時定数の 3 つがわかれば、解が書けます。 1 階の回路(R と C、または R と L)の過渡現象は、すべてこの式で表されます。
例題
\(\dfrac{dy}{dt} + 2y = 10\)、\(y(0) = 0\) を解きます。
- 定常解:\(2 y_s = 10\) から \(y_s = 5\)
- 過渡解:\(y_t = A\,e^{-2t}\)
- 初期条件:\(0 = 5 + A\) から \(A = -5\)
時定数は \(1/2 = 0.5\) s です。検算として元の式に代入すると、\(\dfrac{dy}{dt} = 10e^{-2t}\)、\(2y = 10 - 10e^{-2t}\) で、和は 10 になります。
変数分離による解き方
\(\dfrac{dy}{dt} = -a\,y\) は、\(y\) を含む項と \(t\) を含む項を両辺に分けて積分する方法でも解けます。
両辺を \(e\) の指数にすると \(y = e^{K}e^{-at} = A\,e^{-at}\) です。指数関数が解になることを、仮定せずに導く方法です。
2 階線形微分方程式の解き方¶
L と C の両方を含む回路では、2 回微分した項が現れます。
解き方の骨組みは 1 階のときと同じで、定常解と過渡解の和を作り、初期条件で定数を決めます。定常解は \(y_s = \dfrac{b}{\omega_0^2}\) です。
特性方程式¶
過渡解(右辺を 0 にした式の解)として、1 階のときと同じく指数関数 \(y_t = A\,e^{st}\) を仮定します。微分するたびに \(s\) がかかるので、代入すると
となり、かっこの中が 0 であればよいことがわかります。
これを 特性方程式 と呼びます。微分方程式が、\(s\) についての 2 次方程式に変わりました。解は
です。根号の中の符号によって、解の形が 3 通りに分かれます。
| 条件 | 特性方程式の根 | 過渡解の形 | 名前 |
|---|---|---|---|
| \(\alpha > \omega_0\) | 異なる 2 つの負の実数 \(s_1\)、\(s_2\) | \(A_1 e^{s_1 t} + A_2 e^{s_2 t}\) | 過減衰 |
| \(\alpha = \omega_0\) | 重根 \(s = -\alpha\) | \((A_1 + A_2 t)\,e^{-\alpha t}\) | 臨界減衰 |
| \(\alpha < \omega_0\) | 複素数の組 \(-\alpha \pm j\omega_d\) | \(e^{-\alpha t}(A_1\cos\omega_d t + A_2\sin\omega_d t)\) | 減衰振動 |
ここで \(\omega_d = \sqrt{\omega_0^2 - \alpha^2}\) です。根が複素数になると振動が現れるのは、\(e^{j\omega_d t} = \cos\omega_d t + j\sin\omega_d t\)(オイラーの公式)によって、虚数の指数が三角関数になるからです。
2 階なので、決めるべき定数は \(A_1\)、\(A_2\) の 2 個で、初期条件も 2 個(\(y(0)\) と \(\dfrac{dy}{dt}(0)\))必要です。
たとえ:ドアクローザー
ばねの力で閉まるドアに、油の抵抗で勢いを抑える装置(ドアクローザー)がついています。抵抗が弱すぎるとドアは勢いよく閉まって跳ね返り、何度か揺れてから止まります(減衰振動)。抵抗が強すぎると、なかなか閉まりません(過減衰)。その中間に、跳ね返らずに最も速く閉まる調整があります(臨界減衰)。\(\alpha\) が抵抗の強さ、\(\omega_0\) がばねの強さにあたります。
具体的な回路での計算は第3回で扱います。第4回のラプラス変換を使うと、ここで「仮定して代入する」として行った手順を、表を引く作業に置きかえられます。
まとめ¶
- 微分方程式は、変化の速さについての条件から、時間的な変化のしかた(関数)を求める問題。
- 解 = 定常解(変化が止まった状態)+ 過渡解(右辺を 0 にした式の解)。定数は初期条件から決める。
- 1 階:\(y(t) = y(\infty) + \{y(0) - y(\infty)\}e^{-t/\tau}\)。
- 2 階:特性方程式 \(s^2 + 2\alpha s + \omega_0^2 = 0\) の根が、実数 2 つ・重根・複素数のどれかで、過減衰・臨界減衰・減衰振動に分かれる。