第14回 演習とまとめ¶
この回の位置づけ
シラバス(電気回路II):演習・全体のまとめ。2ポート回路に関する演習を行い、解説する。授業のまとめ。
この回の目標:電気回路II の内容を、問題を見て方法を選び、最後まで計算できる状態にする。
電気回路II の全体像¶
| 到達目標 | 内容 | 回 |
|---|---|---|
| ① 相互誘導、インピーダンス整合 | 相互インダクタンス、結合係数、理想変圧器、整合 | 2、3 |
| ② 交流ブリッジによる測定 | 平衡条件(実部と虚部の 2 条件) | 1 |
| ③ 回路網方程式 | グラフ、閉路電流方程式、節点電圧方程式 | 8、9、10 |
| ④ 1ポート回路の周波数特性 | ベクトル軌跡、周波数特性 | 4 |
| ⑤ 2ポート回路 | Z・Y・F パラメータ、接続、周波数応答関数 | 11、12、13 |
| ⑥ 共振回路 | 直列共振、並列共振、Q、帯域幅 | 5、6 |
後半の内容は、「回路を方程式や行列として、決まった手順で書き下す」という共通の考え方でつながっています。
- 閉路電流方程式と節点電圧方程式は、回路の内部をすべて解くための方法です。
- 2ポートのパラメータは、内部を解いた結果を「入口と出口の関係」だけにまとめたものです。Z パラメータは閉路方程式の、Y パラメータは節点方程式の、入口と出口に関する部分にあたります。
2ポート回路の問題を解く手順¶
- 回路の形を見る。 T 形なら Z パラメータ、π 形なら Y パラメータ、はしご形なら F パラメータが簡単に求まります。
- 定義に従って求める。 迷ったら、開放または短絡した回路を描き、定義の比を計算します。
- 接続があれば、それに合ったパラメータで合成する。 直列は Z の和、並列は Y の和、縦続は F の積。
- 必要なら変換する。 求めたいパラメータが別の種類なら、変換式を使います。
- 検算する。 相反な回路なら \(\dot{Z}_{12} = \dot{Z}_{21}\)、\(\dot{Y}_{12} = \dot{Y}_{21}\)、\(\dot{A}\dot{D} - \dot{B}\dot{C} = 1\)。
間違いやすい点¶
Y パラメータを Z パラメータの要素ごとの逆数にしてしまう
\([\dot{Y}]\) は \([\dot{Z}]\) の逆行列です。\(\dot{Y}_{11} = 1/\dot{Z}_{11}\) ではありません。行列式で割り、対角を入れかえ、対角以外の符号を変えます。
π 形回路の \(\dot{Y}_{12}\) の負号を忘れる
\(\dot{Y}_{12} = \dot{Y}_{21} = -\dot{Y}_c\) です。入力に電圧を加えると、短絡した出力端子からは電流が流れ出ます。流れ込む向きを正としているので、負になります。
F パラメータの積の順番を逆にする
入口側の区間の行列を左に置き、出口側へ向かって右へ順にかけます。行列の積は順番を入れかえると結果が変わります。
F パラメータで、並列の枝に抵抗値をそのまま入れる
並列の枝の行列に入るのはアドミタンスです。20 Ω の抵抗なら \(C\) の位置に入れるのは \(1/20 = 0.05\) S です。
閉路方程式・節点方程式の対角以外の符号
すべて時計回りにそろえた網目電流では、相互インピーダンスは負です。節点方程式の相互アドミタンスは常に負です。できあがった行列が左右対称になっているかも確かめます。
例題:はしご形回路を 3 通りに表す¶
直列 10 Ω、並列 30 Ω、直列 20 Ω の T 形回路(第11回の例)について、3 種類のパラメータを求めます。
Z パラメータ(T 形の公式):
Y パラメータ(逆行列。行列式は \(40 \times 50 - 30^2 = 1100\)):
F パラメータ(縦続接続):
検算:\(AD - BC = 1.333 \times 1.667 - 36.67 \times 0.0333 = 2.222 - 1.222 = 1\)。
\(Y_{11} = 0.0455\) S は、出力を短絡して入力から見たアドミタンスです。直接計算すると、20 Ω と 30 Ω の並列(12 Ω)に 10 Ω が直列で 22 Ω、その逆数は 0.0455 S で、一致します。
練習問題¶
回路網方程式(第8〜10回)¶
2ポート回路(第11〜13回)¶
前半の復習(第1〜6回)¶
説明できるかを確かめる¶
木と補木とは何ですか。回路解析で何の役に立ちますか
木は、すべての節点をつなぎ、閉路を含まない枝の集まりです。木に含まれない枝が補木です。補木の枝 1 本ごとに独立な閉路が 1 つ決まるので、必要な閉路方程式の数(\(b - n + 1\))と、その閉路の選び方がわかります。木の枝の数(\(n - 1\))は、必要な節点方程式の数です。
閉路電流方程式と節点電圧方程式の違いを説明してください
閉路電流方程式は、閉路電流を未知数として電圧則を立てたもので、係数はインピーダンス、右辺は電圧源です。節点電圧方程式は、節点電圧を未知数として電流則を立てたもので、係数はアドミタンス、右辺は電流源です。どちらを使っても同じ結果が得られ、式の数が少ないほうを選びます。
2ポート回路として表す利点は何ですか
回路の内部の構造を知らなくても、4 個のパラメータだけで、入口と出口の電圧・電流の関係が決まります。何をつないでも、そのパラメータと外部の条件から計算できます。また、複数の回路を接続したときの全体の特性を、行列の和や積で求められます。
Z、Y、F パラメータは、それぞれどの接続に向いていますか。なぜですか
直列接続では電流が共通で電圧が和になるので、電流から電圧を求める Z パラメータが足し算になります。並列接続では電圧が共通で電流が和になるので、Y パラメータが足し算になります。縦続接続では前段の出口が後段の入口になるので、出口から入口を求める F パラメータがかけ算になります。
相反性とは何ですか
入口に電流を流したとき出口に現れる電圧と、出口に同じ電流を流したとき入口に現れる電圧が等しいという性質です。抵抗、インダクタ、コンデンサ、変圧器だけでできた回路では必ず成り立ち、\(\dot{Z}_{12} = \dot{Z}_{21}\)、\(\dot{Y}_{12} = \dot{Y}_{21}\)、\(\dot{A}\dot{D} - \dot{B}\dot{C} = 1\) と表されます。
この先の学習¶
電気回路III では、ここまで前提としてきた「正弦波の定常状態」の外へ出ます。スイッチを切りかえた直後の変化(過渡現象)、正弦波ではない周期波(ひずみ波)、3 つの電源を組み合わせた三相交流を扱います。