第10回 節点電圧方程式¶
この回の位置づけ
シラバス(電気回路II):線形回路の解析③(配布資料)。節点電圧とその性質を学んだ後、節点電圧方程式の組み立て方を学ぶ。
この回の目標:任意の回路について、節点電圧方程式を回路図から直接書き下せる。閉路電流方程式とどちらが有利かを判断できる。
節点電圧とは¶
回路の節点の 1 つを電位の基準(0 V)に選びます。これを 基準節点 と呼びます。残りの各節点の、基準節点に対する電位を 節点電圧 と呼びます。
各地点の標高がわかれば、どの 2 地点の間の高低差もわかります。同じように、節点電圧がすべて決まれば、どの枝の電圧も 2 つの節点電圧の差として求まり、枝の電流もオームの法則から求まります。
節点電圧には次の性質があります。
- 枝の電圧を節点電圧の差で表せば、電圧則は自動的に満たされる(一周すれば、標高の差の合計は 0 になる)。
- したがって、残る条件は電流則だけで、基準以外の節点の数(\(n - 1\))だけ式を立てれば足りる。
閉路電流方程式と、役割がちょうど入れかわっています。
方程式の形¶
基準節点のほかに 2 つの節点を持つ回路で考えます。
節点 ① で電流則を立てます。「流れ出る電流の合計 = 電流源から流れ込む電流」と書くと
です。左辺第 1 項は \(R_1\) を通って基準節点へ流れ出る電流、第 2 項は \(R_2\) を通って節点 ② へ流れ出る電流です。節点 ② でも同様に
です。コンダクタンス \(G = 1/R\) を使って整理すると
となります。これが 節点電圧方程式(節点方程式)です。
回路図から直接書き下す規則¶
交流回路にも使えるように、アドミタンスで書きます。
係数の決め方
- 対角の要素 \(\dot{Y}_{ii}\)(自己アドミタンス):節点 \(i\) につながるすべての枝のアドミタンスの 合計。
- 対角以外の要素 \(\dot{Y}_{ij}\)(相互アドミタンス):節点 \(i\) と節点 \(j\) を直接結ぶ枝のアドミタンスに マイナス をつけたもの。直接結ぶ枝がなければ 0。
- 右辺 \(\dot{J}_i\):節点 \(i\) に流れ込む電流源の電流の合計(流れ出る向きなら負)。
閉路電流方程式の規則と比べると、次の入れかえになっています。
| 閉路電流方程式 | 節点電圧方程式 |
|---|---|
| 未知数:閉路電流 | 未知数:節点電圧 |
| 係数:インピーダンス | 係数:アドミタンス |
| 対角:閉路を一周するインピーダンスの和 | 対角:節点に集まるアドミタンスの和 |
| 対角以外:共有する枝のインピーダンス | 対角以外:2 節点を結ぶ枝のアドミタンス |
| 右辺:閉路内の電圧源 | 右辺:節点に流れ込む電流源 |
| 式の数:\(b - n + 1\) | 式の数:\(n - 1\) |
係数行列は、ここでも左右対称になります。
数値例(シミュレータの初期設定)
\(J_1 = 3\) A、\(J_2 = 1\) A、\(R_1 = 4\) Ω、\(R_2 = 2\) Ω、\(R_3 = 4\) Ω のとき、\(G_1 = 0.25\)、\(G_2 = 0.5\)、\(G_3 = 0.25\) S なので
行列式は \(0.75^2 - 0.5^2 = 0.3125\)。クラメルの公式から
検算:節点 ① から流れ出る電流は \(8.8/4 + (8.8 - 7.2)/2 = 2.2 + 0.8 = 3\) A で、\(J_1\) に一致します。
電圧源を含む場合¶
節点電圧方程式は電流則の式なので、電圧源があると、そこを流れる電流がわからず、そのままでは式が立てられません。対処は 2 通りあります。
- 電圧源に直列の抵抗があれば、等価変換で電流源(\(J = E/r\) と並列抵抗 \(r\))に直してから立てる。
- 電圧源の一端が基準節点につながっていれば、他端の節点電圧は電圧源の値そのものなので、未知数が 1 つ減る。
例:2 つの電圧源を持つ回路
電気回路I 第5回の回路(\(E_1 = 10\) V と \(R_1 = 2\) Ω、\(E_2 = 4\) V と \(R_2 = 4\) Ω、中央に \(R_3 = 6\) Ω)は、下側の線を基準にすると、未知の節点は上側の 1 つだけです。2 つの電源を電流源に直すと、\(J_1 = 10/2 = 5\) A、\(J_2 = 4/4 = 1\) A が節点に流れ込み
\(R_3\) の電流は \(6.55 / 6 = 1.09\) A で、網目電流法、重ね合わせの理、テブナンの定理による結果と一致します。網目電流法では 2 元連立方程式でしたが、節点電圧法では式が 1 本で済みました。
この形の式(並列につながった枝の電圧 = 各枝の「起電力 × アドミタンス」の和 ÷ アドミタンスの和)を ミルマンの定理 と呼びます。電気回路III の不平衡三相回路で使います。
どちらの方法を選ぶか¶
- 式の数が少ないほう を選ぶ。閉路電流法は \(b - n + 1\) 本、節点電圧法は \(n - 1\) 本。
- 電圧源が多い 回路は閉路電流法、電流源が多い 回路は節点電圧法が立てやすい。
- 並列の枝が多い回路(節点が少ない)は節点電圧法、直列の素子が多い回路(網目が少ない)は閉路電流法が向いている。
電子回路の解析やコンピュータによる回路シミュレーションでは、節点電圧法を基本にした方法が広く使われています。規則が単純で、平面に描けない回路にもそのまま使えるからです。
まとめ¶
- 節点電圧を未知数にすると、電圧則は自動的に満たされ、電流則の式だけを \(n - 1\) 本立てればよい。
- 対角要素は節点に集まるアドミタンスの和、対角以外は 2 節点を結ぶ枝のアドミタンスにマイナス、右辺は流れ込む電流源の和。
- 閉路電流方程式とは、インピーダンスとアドミタンス、電圧と電流が入れかわった双対の関係にある。