第5回 直列共振¶
この回の位置づけ
シラバス(電気回路II):基本的な交流回路とその周波数特性② −直列共振−(教科書 第21章 21.1–21.4)。R–L–C 直列共振回路のベクトル軌跡、周波数特性について学ぶ。また、共振現象及びバンドパス特性を学ぶ。
必要な準備:第4回のベクトル軌跡、電気回路I 第11回の共振
この回の目標:直列共振回路のベクトル軌跡を描け、共振周波数・Q・帯域幅を計算できる。バンドパス特性を説明できる。
直列共振回路のベクトル軌跡¶
R–L–C 直列回路のインピーダンスは
です。実部は周波数によらず \(R\) で、虚部は \(\omega\) が小さいとき大きな負の値、\(\omega\) が大きいとき大きな正の値になります。したがって、\(\dot{Z}\) の軌跡は、点 \(R\) を通って実軸に垂直な 直線全体 です。周波数を上げると、矢印の先は下から上へ動きます。
虚部が 0 になって軌跡が実軸を横切る点が、共振です。
アドミタンス \(\dot{Y} = 1/\dot{Z}\) の軌跡は、第4回の「直線の逆数は円」の関係から、直径 \(\dfrac{1}{R}\) の 円全体 になります。R–L 直列回路では下半分、R–C 直列回路では上半分だけだった半円が、L と C の両方があることで 1 周の円になります。
| 周波数 | \(\dot{Z}\) の先端 | \(\dot{Y}\) の先端 | 性質 |
|---|---|---|---|
| \(f \to 0\) | はるか下 | 原点 | 容量性(C が電流をさえぎる) |
| \(f < f_0\) | 実軸の下 | 円の上半分 | 容量性(電流が進む) |
| \(f = f_0\) | 実軸上の点 \(R\) | 円の右端 \(1/R\) | 抵抗だけと同じ |
| \(f > f_0\) | 実軸の上 | 円の下半分 | 誘導性(電流が遅れる) |
| \(f \to \infty\) | はるか上 | 原点 | 誘導性(L が電流をさえぎる) |
一定の電圧 \(\dot{V}\) を加えると、電流は \(\dot{I} = \dot{Y}\dot{V}\) なので、電流のフェーザもこの円を描きます。共振のとき電流が最大で、電圧と同相です。
共振曲線と Q¶
電流の大きさを周波数に対して描いたグラフを 共振曲線 と呼びます。
共振の鋭さを表す量が Q(quality factor)です。
\(Q\) は、共振時の「リアクタンスの大きさ ÷ 抵抗」です。\(Q\) が大きいとは、エネルギーをためる働き(L と C)に比べて、エネルギーを失う働き(R)が小さいことを意味します。鐘をたたいたとき、長く鳴り続ける鐘ほど \(Q\) が大きいといえます。
電圧の拡大¶
共振時の電流は \(I = V/R\) です。このとき、インダクタとコンデンサの電圧は
となり、電源電圧の \(Q\) 倍 になります。\(V_L\) と \(V_C\) は逆向きで打ち消し合うので、電源からは見えませんが、各素子には大きな電圧がかかっています。\(Q\) が 50 の回路に 10 V を加えると、コンデンサには 500 V がかかります。素子の耐電圧を選ぶときに注意が必要な点であり、同時に、小さな信号を大きく取り出す手段として利用される点でもあります。
帯域幅とバンドパス特性¶
共振曲線で、電流が最大値の \(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\) になる周波数は、\(f_0\) の両側に 1 つずつあります。低いほうを \(f_1\)、高いほうを \(f_2\) とし、その差を 帯域幅(半値幅)と呼びます。
電流が \(\dfrac{1}{\sqrt{2}}\) 倍のとき、抵抗で消費する電力(\(I^2 R\))は共振時の半分になります。そのため \(f_1\)、\(f_2\) を半電力点とも呼びます。
ベクトル軌跡の上では、\(f_1\) と \(f_2\) は、リアクタンスの大きさがちょうど \(R\) に等しくなる点(\(\dot{Z}\) の偏角が ∓45°)です。\(\dot{Y}\) の円では、いちばん上といちばん下の点にあたります。
\(B = f_0 / Q\) の導出
\(|\dot{Z}| = \sqrt{2}R\) となる条件は \(\omega L - \dfrac{1}{\omega C} = \pm R\) です。正の符号の式の解を \(\omega_2\)、負の符号の式の解を \(\omega_1\) とすると
です。2 式を辺ごとに足して整理すると \(\omega_1\omega_2 = \dfrac{1}{LC} = \omega_0^2\)、引いて整理すると \(\omega_2 - \omega_1 = \dfrac{R}{L}\) が得られます。したがって \(B = \dfrac{\omega_2 - \omega_1}{2\pi} = \dfrac{R}{2\pi L} = \dfrac{f_0}{Q}\) です。\(f_0\) は \(f_1\) と \(f_2\) の相乗平均(\(f_0 = \sqrt{f_1 f_2}\))になっています。
直列共振回路は、\(f_0\) の近くの周波数の電流だけをよく通し、それ以外は通しません。特定の周波数帯だけを通すこの性質を バンドパス特性(帯域通過特性)と呼びます。
ラジオの選局がこの応用です。アンテナにはあらゆる放送局の電波による電圧が同時に生じていますが、共振周波数を目的の局の周波数に合わせると、その局の信号だけが大きな電流になります。可変コンデンサで \(C\) を変えると \(f_0\) が動き、選局ができます。\(Q\) が大きいほど帯域幅が狭く、隣の局と分離しやすくなります。一方、帯域幅が狭すぎると、音声や音楽を伝えるのに必要な周波数の幅が通らなくなるので、用途に応じた \(Q\) が選ばれます。
シミュレータで \(R\) を変え、共振曲線の鋭さと帯域幅の変化を確かめてください。\(R\) を変えても \(f_0\) は動きません。\(L\) や \(C\) を変えると \(f_0\) が動きます。
数値例
\(R = 10\) Ω、\(L = 10\) mH、\(C = 1\) μF の直列回路(共振曲線のシミュレータの初期設定)。
- \(f_0 = \dfrac{1}{2\pi\sqrt{10\times10^{-3} \times 1\times10^{-6}}} = 1592\) Hz
- \(Q = \dfrac{1}{R}\sqrt{\dfrac{L}{C}} = \dfrac{1}{10}\sqrt{\dfrac{10^{-2}}{10^{-6}}} = \dfrac{100}{10} = 10\)
- \(B = f_0 / Q = 159\) Hz
- 10 V を加えると、共振時の電流は 1 A、\(V_L = V_C = QV = 100\) V
まとめ¶
- R–L–C 直列回路の \(\dot{Z}\) の軌跡は実軸に垂直な直線、\(\dot{Y}\) の軌跡は直径 \(1/R\) の円。
- 共振周波数 \(f_0 = 1/(2\pi\sqrt{LC})\) で \(\dot{Z} = R\)(最小)、電流が最大。
- \(Q = \omega_0 L/R\)。共振時に \(V_L = V_C = QV\)。
- 帯域幅 \(B = f_0/Q\)。\(Q\) が大きいほど鋭いバンドパス特性になる。