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第4回 R–L・R–C 回路のベクトル軌跡

この回の位置づけ

シラバス(電気回路II):基本的な交流回路とその周波数特性①(教科書 第20章 20.1–20.3)。R–L および R–C 直・並列回路のベクトル軌跡と周波数特性について学ぶ。

必要な準備:電気回路I 第9回〜第11回

この回の目標:周波数を変えたとき、インピーダンスとアドミタンスの矢印の先がどのような図形を描くかを説明できる。

ベクトル軌跡とは

インピーダンスは複素平面上の 1 本の矢印でした。インダクタやコンデンサのリアクタンスは周波数によって変わるので、周波数を変えていくと、矢印の先は複素平面の上を動いていきます。その先端がたどる道すじを ベクトル軌跡 と呼びます。

ある 1 つの周波数での値を計算するだけでは、回路の性質の一部分しかわかりません。ベクトル軌跡を描くと、周波数を 0 から無限大まで変えたときの大きさと位相の変化が、1 枚の図でつかめます。天気図の台風の進路図が、各時刻の位置を 1 本の線でつないで全体の動きを示すのと同じ役割です。

R–L 直列回路

インピーダンスは

\[ \dot{Z} = R + j\omega L \]

です。周波数を変えても実部は \(R\) のままで、虚部だけが 0 から無限大まで増えていきます。したがって、\(\dot{Z}\) の軌跡は、実軸上の点 \(R\) から真上に伸びる 半直線 です。

アドミタンス \(\dot{Y} = \dfrac{1}{\dot{Z}}\) の軌跡は、半円 になります。直径は \(\dfrac{1}{R}\) で、実軸の下側にあります。

  • \(\omega = 0\):\(\dot{Y} = \dfrac{1}{R}\)(半円の右端。インダクタは導線と同じ)
  • \(\omega \to \infty\):\(\dot{Y} \to 0\)(原点。インダクタが電流を通さない)
  • \(\omega L = R\):偏角が −45° で、半円のいちばん下の点

電圧を一定にして周波数を変えると、電流は \(\dot{I} = \dot{Y}\dot{V}\) なので、電流のフェーザの軌跡もこの半円と同じ形になります。

直線の逆数が円になる理由

\(\dot{Y} = \dfrac{1}{R + jX}\) の実部と虚部を \(G\)、\(B\) と置くと

\[ G = \frac{R}{R^2 + X^2}, \qquad B = \frac{-X}{R^2 + X^2} \]

です。ここから \(G^2 + B^2 = \dfrac{1}{R^2 + X^2} = \dfrac{G}{R}\) が成り立ち、変形すると

\[ \left(G - \frac{1}{2R}\right)^2 + B^2 = \left(\frac{1}{2R}\right)^2 \]

となります。これは、中心 \(\left(\dfrac{1}{2R}, 0\right)\)、半径 \(\dfrac{1}{2R}\) の円の式です。\(X\) がどのような値でもこの式を満たすので、\(\dot{Y}\) の先端は必ずこの円の上にあります。

一般に、複素平面で 原点を通らない直線の逆数は、原点を通る円 になります。原点からいちばん近い点(距離 \(R\))の逆数が、原点からいちばん遠い点(距離 \(1/R\))になり、これが円の直径です。

R–C 直列回路

\[ \dot{Z} = R - j\frac{1}{\omega C} \]

実部が \(R\) で、虚部が負の側で変化します。\(\omega\) が 0 に近いとき虚部は \(-\infty\)、\(\omega\) が大きくなると 0 に近づくので、軌跡は真下から点 \(R\) に向かって上ってくる半直線です。\(\dot{Y}\) の軌跡は、実軸の上側の半円になります。R–L 直列回路の図を上下に裏返し、周波数の進む向きを逆にしたものです。

並列回路

R–L 並列回路、R–C 並列回路では、アドミタンスが足し算になるので、役割が入れかわります。

\[ \text{R–L 並列:}\ \dot{Y} = \frac{1}{R} - j\frac{1}{\omega L}, \qquad \text{R–C 並列:}\ \dot{Y} = \frac{1}{R} + j\omega C \]

\(\dot{Y}\) の軌跡が半直線、\(\dot{Z}\) の軌跡が直径 \(R\) の半円です。シミュレータで回路を切りかえて確かめてください。

回路 \(\dot{Z}\) の軌跡 \(\dot{Y}\) の軌跡 性質
R–L 直列 半直線(上向き) 半円(下側) 誘導性
R–C 直列 半直線(下側) 半円(上側) 容量性
R–L 並列 半円(上側) 半直線(下側) 誘導性
R–C 並列 半円(下側) 半直線(上向き) 容量性

誘導性の回路では \(\dot{Z}\) が実軸の上、\(\dot{Y}\) が実軸の下に来ます。容量性ではその逆です。逆数をとると偏角の符号が反転するからです。

周波数特性

ベクトル軌跡は、大きさと偏角を 1 枚にまとめた図です。これを周波数の関数として別々のグラフに描いたものが、電気回路I 第11回で扱った周波数特性です。

R–L 直列回路に一定の電圧を加えたときの電流は

\[ I = \frac{V}{\sqrt{R^2 + (\omega L)^2}}, \qquad \text{位相} = -\tan^{-1}\frac{\omega L}{R} \]

です。低い周波数では電流は \(V/R\) でほぼ一定、高い周波数では周波数に反比例して小さくなります。その境目が \(\omega L = R\)、つまり

\[ f_c = \frac{R}{2\pi L} \]

で、このとき電流は最大値の \(1/\sqrt{2}\)、位相は −45° です。ベクトル軌跡の半円のいちばん下の点にあたります。R–C 回路では境目が \(f_c = \dfrac{1}{2\pi RC}\) になります。

まとめ

  • ベクトル軌跡は、周波数を変えたときにインピーダンスやアドミタンスの先端がたどる道すじ。
  • 直列回路では \(\dot{Z}\) が半直線、\(\dot{Y}\) が半円。並列回路ではその逆。
  • 原点を通らない直線の逆数は、原点を通る円になる。
  • 半円の頂点は、抵抗とリアクタンスの大きさが等しくなる周波数(偏角 ±45°)。

練習