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第1回 回路Iの復習と交流ブリッジ

この回の位置づけ

シラバス(電気回路II):ガイダンス・電気回路I の復習。電気回路I の授業内容について復習する。

この回の目標:電気回路I の交流回路の計算手順を思い出し、電気回路II で使える状態にする。あわせて、到達目標②の交流ブリッジによる素子の測定法を理解する。

電気回路II で学ぶこと

電気回路I では、素子をインピーダンスに置きかえれば、交流回路を直流回路と同じ方法で解けることを学びました。電気回路II は、その方法を 4 つの方向に広げます。

内容 回 電気回路I のどこを広げるか
コイルどうしが磁界でつながる回路(相互誘導、変圧器) 第2〜3回 インダクタ
周波数を変えたときの回路のふるまい(ベクトル軌跡、共振) 第4〜6回 周波数特性、共振
大きな回路の方程式を機械的に立てる方法(閉路・節点方程式) 第8〜10回 キルヒホッフの法則、網目電流法
回路を「入口と出口のある箱」として扱う方法(2ポート回路) 第11〜13回 テブナンの定理

電気回路I の要点

以下の項目に不安があれば、リンク先に戻って確認してください。

項目 要点 参照
複素数 直交形式 \(a + jb\) と極形式 \(r\angle\theta\)。たし算は直交形式、かけ算・わり算は極形式 I 第8回
フェーザ 正弦波の実効値と位相を 1 個の複素数で表す I 第8回
インピーダンス \(R\)、\(j\omega L\)、\(\dfrac{1}{j\omega C}\)。\(\dot{V} = \dot{Z}\dot{I}\) I 第9回
直列・並列 直列は \(\dot{Z}\) の和、並列は \(\dot{Y}\) の和 I 第10回、第11回
電力 \(P = VI\cos\varphi\)、\(Q = VI\sin\varphi\)、\(S = VI\) I 第12回
回路網の解析 網目電流法、重ね合わせの理、テブナンの定理 I 第5回、第6回、第13回

交流ブリッジ

電気回路I 第4回のホイートストンブリッジは、4 個の抵抗の比を利用して未知の抵抗を測る回路でした。4 つの辺をインピーダンスに、電源を交流に、検流計を交流の検出器に置きかえたものが 交流ブリッジ で、コイルのインダクタンスやコンデンサの静電容量の測定に使われます。

平衡条件は、直流のときの式で抵抗をインピーダンスに読みかえたものです。

\[ \dot{Z}_1 \dot{Z}_4 = \dot{Z}_2 \dot{Z}_3 \]

直流との違いは、この式が 複素数の等式 であることです。複素数が等しいためには、実部どうしと虚部どうしが、それぞれ等しくなければなりません。したがって、交流ブリッジの平衡条件は 2 つの式になり、平衡させるには 2 つの素子を調整する必要があります。その代わり、1 回の測定で未知の量を 2 つ(たとえばコイルのインダクタンスと抵抗分)求められます。

天びんにたとえると、直流ブリッジは重さだけをつり合わせる天びん、交流ブリッジは重さと重心の位置の両方をつり合わせる天びんです。

マクスウェルブリッジ

未知のコイル(抵抗分 \(R_x\)、インダクタンス \(L_x\))を測る代表的な回路です。

辺 1 に未知のコイル \(\dot{Z}_1 = R_x + j\omega L_x\)、辺 2 と辺 3 に抵抗 \(R_2\)、\(R_3\)、辺 4 に抵抗 \(R_4\) とコンデンサ \(C_4\) の並列回路を置きます。辺 4 のアドミタンスは \(\dfrac{1}{R_4} + j\omega C_4\) なので、平衡条件 \(\dot{Z}_1 = \dot{Z}_2\dot{Z}_3 \times \dfrac{1}{\dot{Z}_4}\) は

\[ R_x + j\omega L_x = R_2 R_3\left(\frac{1}{R_4} + j\omega C_4\right) \]

となります。実部と虚部を比べると

\[ R_x = \frac{R_2 R_3}{R_4}, \qquad L_x = R_2 R_3 C_4 \]

が得られます。この結果には \(\omega\) が含まれていません。電源の周波数が多少ずれても測定結果に影響しないので、測定に適した回路です。

シミュレータで \(R_4\) と \(C_4\) を交互に動かし、検出器の電圧が最小になる点を探してください。片方だけを動かしても 0 にはならず、2 つを交互に追い込む必要があることがわかります。

ほかの交流ブリッジ

辺に置く素子の組み合わせを変えると、測る対象の違うブリッジになります。コンデンサの容量と損失を測るシェーリングブリッジ、周波数を測るウィーンブリッジなどがあります。どれも、平衡条件 \(\dot{Z}_1\dot{Z}_4 = \dot{Z}_2\dot{Z}_3\) の実部と虚部を比べるという同じ手順で解析できます。

まとめ

  • 電気回路II は、電気回路I の交流回路の計算(フェーザとインピーダンス)を前提に進む。
  • 交流ブリッジの平衡条件は \(\dot{Z}_1\dot{Z}_4 = \dot{Z}_2\dot{Z}_3\)。複素数の等式なので、実部と虚部の 2 つの条件になる。
  • マクスウェルブリッジでは \(R_x = R_2R_3/R_4\)、\(L_x = R_2R_3C_4\)。