第11回 2端子回路の接続と周波数特性¶
この回の位置づけ
シラバス:交流回路④(教科書 第13章 13.1–13.2、第14章 14.1–14.2)。2端子回路交流回路素子の直列接続、並列接続について学ぶ。到達目標④の「代表的な交流回路の周波数特性」もこの回で扱います。
この回の目標:任意のインピーダンスどうしを直列・並列に合成できる。周波数を変えたときに回路の性質がどう変わるか(共振、フィルタ)を説明できる。
2端子回路とは¶
端子が 2 つある回路を 2端子回路 と呼びます。抵抗 1 個も、R と L の直列回路も、もっと複雑な回路も、端子が 2 つならすべて 2端子回路で、外から見た性質は 1 個のインピーダンス \(\dot{Z} = R + jX\) で表せます。
第10回では R・L・C という素子そのものを接続しました。この回では、すでに何らかのインピーダンスを持つ 2端子回路どうしを接続します。ブロック玩具で、いくつかの部品を組んだかたまりを 1 個の部品とみなして、さらに大きなものを組むのと同じです。
直列接続と並列接続¶
2 つの 2端子回路 \(\dot{Z}_1 = R_1 + jX_1\) と \(\dot{Z}_2 = R_2 + jX_2\) を接続します。
直列接続 では、インピーダンスを足します。実部どうし、虚部どうしを足すだけです。
並列接続 では、アドミタンスを足します。2 個の場合は「積 ÷ 和」の形も使えます。
並列の計算では、分母の和は直交形式で、分子の積と全体のわり算は極形式で行うと間違いが減ります。
数値例(シミュレータの初期設定)
\(\dot{Z}_1 = 30 + j40 = 50\angle 53.1°\) Ω、\(\dot{Z}_2 = 50 - j60 = 78.1\angle(-50.2°)\) Ω とします。
直列:\(\dot{Z} = (30 + 50) + j(40 - 60) = 80 - j20 = 82.5\angle(-14.0°)\) Ω。全体としては容量性です。
並列:
- 和(直交形式):\(\dot{Z}_1 + \dot{Z}_2 = 80 - j20 = 82.5\angle(-14.0°)\)
- 積(極形式):\(\dot{Z}_1\dot{Z}_2 = 50 \times 78.1\angle(53.1° - 50.2°) = 3905\angle 2.9°\)
- 商:\(\dot{Z} = \dfrac{3905\angle 2.9°}{82.5\angle(-14.0°)} = 47.4\angle 16.9° = 45.3 + j13.8\) Ω
並列にすると、全体としては誘導性になりました。直列と並列で性質が逆転することがあります。
分圧と分流の式も、直流と同じ形で成り立ちます。
直列回路と並列回路の等価変換¶
\(R\) と \(X\) の直列回路 \(\dot{Z} = R + jX\) は、同じ周波数では、あるコンダクタンス \(G\) とサセプタンス \(B\) の並列回路と区別がつきません。変換は逆数をとるだけです。
並列回路の抵抗は \(1/G\) で、これは直列回路の \(R\) とは異なる値です。また、\(X\) は周波数によって変わるので、この等価関係は 1 つの周波数でしか成り立ちません。
周波数特性¶
インダクタとキャパシタのリアクタンスは周波数によって変わるので、これらを含む回路は、周波数によって異なる応答をします。電源の周波数を変えたときに、回路の電流や電圧の大きさと位相がどう変わるかを表したものを 周波数特性 と呼びます。
ラジオの選局、スピーカーの音質調整、電源のノイズ除去は、どれも周波数特性の利用です。
直列共振¶
RLC 直列回路のインピーダンスは \(\dot{Z} = R + j\left(\omega L - \dfrac{1}{\omega C}\right)\) でした。周波数を上げていくと、\(\omega L\) は増え、\(\dfrac{1}{\omega C}\) は減ります。両者がちょうど等しくなる周波数では、リアクタンス分が打ち消し合って 0 になります。この状態を 共振 と呼びます。
\(f_0\) を 共振周波数 と呼びます。
共振周波数では、次のことが起こります。
- インピーダンスが最小(\(\dot{Z} = R\))になり、電流が最大(\(I = V/R\))になる。
- 電圧と電流が同相になる。
- インダクタの電圧 \(V_L\) とキャパシタの電圧 \(V_C\) は、大きさが等しく向きが逆で、打ち消し合う。
たとえ:ブランコを押すタイミング
ブランコには、長さで決まる固有の揺れの周期があります。その周期に合わせて押すと、小さな力でも揺れが大きくなります。周期の合わない押し方では、どれだけ押しても大きく揺れません。
RLC 回路では、エネルギーがインダクタ(磁界)とキャパシタ(電界)の間を行き来しています。この行き来の周期が \(L\) と \(C\) で決まり、電源の周波数がそれに一致したとき、電流が大きくなります。
共振の鋭さ Q¶
共振の山の鋭さは、Q(quality factor、尖鋭度)という値で表します。
\(Q\) は、共振時にインダクタ(またはキャパシタ)の電圧が電源電圧の何倍になるかも表します(\(V_L = V_C = QV\))。\(Q\) が 10 なら、100 V の電源に対して各素子に 1000 V がかかります。
電流が最大値の \(1/\sqrt{2}\) 以上である周波数の幅を 帯域幅 \(B\) と呼び、\(B = f_0 / Q\) の関係があります。\(R\) を小さくすると \(Q\) が大きくなり、山が鋭く、帯域幅が狭くなることをシミュレータで確かめてください。ラジオの選局回路は、\(Q\) の大きい共振回路で、目的の放送局の周波数だけを取り出しています。
並列共振¶
\(L\) と \(C\) を並列にした回路でも共振が起こります。条件は同じ \(\omega_0 = 1/\sqrt{LC}\) ですが、結果は逆で、共振周波数でアドミタンスが最小(インピーダンスが最大)になり、電源から流れ込む電流が最小になります。\(L\) と \(C\) の間を大きな電流が循環していても、外からは電流がほとんど流れ込まない状態です。
| 直列共振 | 並列共振 | |
|---|---|---|
| 共振時のインピーダンス | 最小(\(R\)) | 最大 |
| 共振時の電流 | 最大 | 最小 |
| 拡大される量 | \(L\)、\(C\) の電圧(\(Q\) 倍) | \(L\)、\(C\) の電流(\(Q\) 倍) |
RC 回路のフィルタ特性¶
抵抗とキャパシタを直列にし、片方の素子の電圧を出力として取り出すと、特定の周波数範囲だけを通す回路(フィルタ)になります。これは第3回の分圧回路の、抵抗の片方をキャパシタに置きかえたものです。
キャパシタの電圧を出力にすると、分圧の式から
となります。周波数が低いとキャパシタのインピーダンスが大きく、入力電圧のほとんどがキャパシタにかかるので、出力は入力とほぼ等しくなります。周波数が高いとキャパシタのインピーダンスが小さくなり、出力は小さくなります。低い周波数だけを通すので 低域通過フィルタ と呼びます。
出力の大きさが入力の \(1/\sqrt{2}\) になる周波数を 遮断周波数 と呼びます。\(\omega CR = 1\) となる周波数です。
出力を抵抗の電圧に切りかえると、逆に高い周波数だけを通す 高域通過フィルタ になります。入力の周波数スライダを動かして、下の波形の大きさと位相が変わるようすを見てください。
まとめ¶
- 2端子回路の直列はインピーダンスの和、並列はアドミタンスの和。
- 直列共振の条件は \(\omega L = 1/(\omega C)\)、共振周波数は \(f_0 = 1/(2\pi\sqrt{LC})\)。共振時は \(\dot{Z} = R\) で電流が最大。
- \(Q = \omega_0 L / R\) が大きいほど共振が鋭い。
- RC 回路は、遮断周波数 \(f_c = 1/(2\pi RC)\) を境に、信号を通す範囲と通さない範囲が分かれる。