ゼロからわかる電気回路 I・II・III¶
この教材は、大学の講義「電気回路I」「電気回路II」「電気回路III」(各 14 回)の内容を、数学や物理の予備知識がなくても読み進められるように作ったものです。各ページには、スライダを動かして結果を確かめられるシミュレータと、数値が毎回変わる練習問題を置いています。
上の図は、この教材で最初に使うたとえです。電池を「水を押し出すポンプ」、抵抗を「細い管」、電流を「水の流れ」に置きかえると、電気回路で起こることの多くを水の動きとして想像できます。スライダを動かして、流れの速さがどう変わるかを見てください。
この教材の読み方¶
準備編から順に読む必要はありません。 第1回から読み始め、数式でつまずいたときに準備編の該当ページへ戻る読み方を勧めます。各回の冒頭に、その回で必要になる準備編のページを示しています。
シミュレータと図では、次の色を全ページで共通に使います。
| 色 | 表すもの |
|---|---|
| ■ 赤 | 電圧 |
| ■ 青 | 電流(流れる粒も青) |
| ■ 黄・橙 | 電力 |
回路図の抵抗は、現在の JIS 規格に合わせて長方形で描いています。古い教科書や海外の資料に出てくるギザギザの線も同じ抵抗を表します。
学習の地図¶
3 つの科目は積み重ねになっています。電気回路I の内容が、II と III の全体で前提になります。
| 科目 | 内容 | 入口 |
|---|---|---|
| 準備編 | 数と単位、方程式、三角関数、微分・積分の意味、行列、指数関数 | 準備1 |
| 電気回路I | 直流回路の法則と定理、複素数とフェーザによる交流回路の計算 | 第1回 |
| 電気回路II | 相互誘導と変圧器、共振とベクトル軌跡、回路網方程式、2ポート回路 | 第1回 |
| 電気回路III | 過渡現象とラプラス変換、ひずみ波とフーリエ展開、三相交流と回転磁界 | 第1回 |
電気回路I¶
講義は前半の直流回路(第1〜7回)と後半の交流回路(第8〜14回)に分かれます。後半の計算方法は前半と同じ形をしているので、前半を確実にしておくと後半の負担が大きく減ります。
| 回 | 内容 | 新しく必要になる数学 |
|---|---|---|
| 第1回 | 電荷・電流・電位・電圧・電力 | かけ算・わり算、単位の接頭語(準備1) |
| 第2回 | 直流と交流、電圧源と電流源、R・L・C、過渡現象 | 変化の速さ(準備4) |
| 第3回 | オームの法則、直列・並列、分圧・分流、最大電力 | 比例・反比例、分数(準備2) |
| 第4回 | 直並列回路、Δ–Y 変換、ブリッジ回路 | 分数の計算 |
| 第5回 | キルヒホッフの電流則・電圧則、網目電流法 | 連立方程式(準備2) |
| 第6回 | 重ね合わせの理、テブナン・ノートンの定理、電源の等価変換 | — |
| 第7回 | 直流回路の演習 | — |
| 第8回 | 複素数、正弦波交流、実効値、フェーザ | 三角関数(準備3)、複素数 |
| 第9回 | 交流での R・L・C、インピーダンスとアドミタンス | 複素数のかけ算・わり算 |
| 第10回 | RLC の直列・並列、複素数による定常解析 | 三平方の定理 |
| 第11回 | 2端子回路の直列・並列接続、周波数特性 | 対数目盛の読み方 |
| 第12回 | 瞬時電力、有効・無効・皮相電力、力率 | — |
| 第13回 | 交流回路網の解析と諸定理 | 複素数の連立方程式 |
| 第14回 | 交流回路の演習と全体のまとめ | — |
電気回路II¶
| 回 | 内容 | 新しく必要になる数学 |
|---|---|---|
| 第1回 | 電気回路I の復習、交流ブリッジ | — |
| 第2回 | 相互インダクタンス、結合コイルの式、T 形等価回路 | — |
| 第3回 | 結合係数、理想変圧器、インピーダンス整合 | — |
| 第4回 | R–L・R–C 回路のベクトル軌跡と周波数特性 | 円の方程式 |
| 第5回 | 直列共振、Q、帯域幅、バンドパス特性 | — |
| 第6回 | 並列共振(反共振) | — |
| 第7回 | 演習(電磁誘導・周波数特性) | — |
| 第8回 | グラフ、木と補木、独立な方程式の数 | — |
| 第9回 | 閉路電流方程式 | 行列、行列式(準備5) |
| 第10回 | 節点電圧方程式 | 行列 |
| 第11回 | 2ポート回路、Z パラメータ、直列接続 | 行列 |
| 第12回 | Y パラメータ、並列接続 | 逆行列 |
| 第13回 | F パラメータ、縦続接続、パラメータの変換 | 行列のかけ算 |
| 第14回 | 演習とまとめ | — |
電気回路III¶
| 回 | 内容 | 新しく必要になる数学 |
|---|---|---|
| 第1回 | 電気回路I・II の復習 | — |
| 第2回 | 微分方程式の解き方 | 指数関数(準備6) |
| 第3回 | R–L、R–C、R–L–C 回路の過渡現象 | 微分方程式 |
| 第4回 | ラプラス変換、部分分数分解 | ラプラス変換 |
| 第5回 | ラプラス変換による回路解析 | — |
| 第6回 | ひずみ波、フーリエ展開 | フーリエ級数 |
| 第7回 | ひずみ波の実効値・電力・回路計算 | — |
| 第8回 | 三相交流、Y 結線と Δ 結線 | — |
| 第9回 | 平衡三相回路(Y–Y、Δ–Δ) | — |
| 第10回 | 三相電力、V 結線 | — |
| 第11回 | 不平衡三相回路 | — |
| 第12回 | 二相回路 | — |
| 第13回 | 回転磁界 | — |
| 第14回 | まとめと試験対策 | — |
シラバスの到達目標との対応¶
電気回路I¶
- 電気回路論の役割を理解する:第1回で、電気の現象を「電圧・電流・抵抗」という少数の量で表す考え方を扱います。
- 基礎法則・定理を理解し説明できる:オームの法則(第3回)、キルヒホッフの法則(第5回)、重ね合わせの理とテブナン・ノートンの定理(第6回)が該当します。
- キルヒホッフ則による回路網方程式を組み立てられる:第5回で式の立て方を手順として示し、第13回で交流に拡張します。
- 交流回路の記号解析法と周波数特性を理解し説明できる:第8〜11回で、複素数を使った計算方法(記号解析法)と周波数特性を扱います。
電気回路II¶
- 相互誘導現象、インピーダンス整合:第2回、第3回
- 交流ブリッジによる素子の測定法:第1回
- 回路網方程式(閉路電流方程式、節点電圧方程式)の組み立て:第8回、第9回、第10回
- 1ポート回路の回路網関数と周波数特性:第4回(ベクトル軌跡)、第5回、第6回
- 2ポート回路のマトリックス表現、パラメータ計算、周波数応答関数:第11回、第12回、第13回
- 直列・並列共振器:第5回、第6回
電気回路III¶
教科書との関係¶
講義の教科書は、西巻正郎・森武昭・荒井俊彦『電気回路の基礎(第3版)』と、西巻正郎・下川博文・奥村万規子『続 電気回路の基礎(第3版)』(いずれも森北出版)です。各ページの冒頭に、シラバスが指定する教科書の章節を載せています。シラバスで「配布資料」とされている回(グラフ理論、節点電圧方程式、不平衡三相回路、二相回路、回転磁界など)は、標準的な内容で構成しています。
この教材は教科書の代わりではなく、教科書を読む前後に、式の意味を手で動かして確かめるための補助として使ってください。記号や符号の約束(F パラメータの電流の向き、複素電力の定義など)が教科書と異なる可能性がある箇所には、本文中に注記を入れています。